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  • 重い女


「奈央ってさぁ、重いんだよ」





そう言われたのは初めてじゃない










【恋愛履歴書】

#1 重い女










なぜ男は『重い』と言うのか




そもそも“重い”って何?




結婚の話をしたら“重い”の?


子供の話をしたら“重い”の?


将来の話をしたら“重い”の?




ってか…



―――私のドコが“重い”んだよっ!!!!!!








「意味分かんないしっ!!!」



そう怒鳴りながらグラスに入っていたカクテルを一気に飲み干した。





女子高、女子大を卒業後、フツーの営業事務に就職した、ただのOL



吉野奈央、23才。
(ヨシノナオ)




現在午前0時をまわったところ。


私は一人、駅から徒歩10分程の場所にあるバーのカウンターにてヤケ酒をしていた。







「なーお、もうそれくらいにしとけ?」



飲み終えたグラスをバンッとカウンターに置いた私に苦笑しながらそう言ってきたのは腐れ縁の男友達、




伊藤真(イトウシン)



私と同い年で23才。



真は大学時代からここのバーでバイトをしていて、卒業してもそのまま働き続けている。







「おい、聞いてんのか?」

「真テキーラちょ〜だ〜い」

「聞いてねぇし」

「テキーラテキーラ、メチャメチャ濃いヤツ!!」





カウンターで溜息をつきながら真は水の入ったコップを差し出した。







「ちょっとぉー!!なんで水なのよー!!」

「お前さ、もう何杯目だと思ってんの?いい加減やめとけって」

「やだぁ!!飲むの!!!」

「いつも酔いつぶれたお前を誰が家まで送り届けてると思ってんだよ」

「やだぁ!!飲むの!!!マスター!!バイトが酒を出してくれないーー!!!!」





カウンターにいる真の横で果物を切っているマスターに私はクレームを出した。


マスターは笑いながら




「奈央ちゃん、真の言う通りもうその辺にしときなさい。今果汁絞ってあげるから」


と、オレンジをぎゅうっと搾り出した。




マスターは40過ぎだけどヒゲの似合うダンディな大人の男。


大学時代から真がバイトをしてることもあって行き着けの私はマスターとも仲良し。




薄暗い照明とお洒落な内装


客は20代の女性が主でなかなか来やすいし


雰囲気も良くてマスターもいい人




よってここのバーは居心地最高なわけで



一人で何時間でもいれちゃうのよね…。







「真!!お酒!!お酒ちょうだい!!!」

「ヤダ」

「ヤダって何!!?ちょうだいってば!!!」

「ほれ、マスターお手製のオレンジジュース出来たぞ」

「やだー!!お酒がいーの!!!」





テーブルに顔を伏せながら駄々をこねる私の頭に真の大きな手がそっと下りてきた。



そしてポンポンと、優しく叩くと



「話聞いてやるから、無理に酔おうとすんな」



その真の言葉に涙が出そうだった。






私は男に振られるとここへ来る



そしてヤケ酒をしては真に愚痴を聞いてもらっている




私がヤケ酒をする=男に振られた



そうゆうこと。







「えーと…飲み会で知り合ったヤツだったよな?」

「違うよ!!それは2ヶ月前に別れた男!!」

「あぁ、会社によく来るジャストの社員だったか」

「それはその前の男!!!」

「あー、例の上司か」

「いつの話してんの!!!?それは1年も前に終わった男だし!!!」





何でそうやって過去の男を出して人の古傷をえぐるかなぁコイツは!!!







「先月合コンで知り合った電通の男だよ!!!」



思わず声を張り上げてしまった。




そう、有名広告代理店の社員と私は先月から付き合っていた。



けれど私が結婚の話を出した瞬間





『重い』



そう言われて振られた。




ハッキリ言って意味分かんない。






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