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  • 遭遇

私、仲村マキ(25)はいつも無難な道を行く





周りから好かれなくても嫌われないよう




敵を作らず目立たずに




地味にコツコツ生きる




それが私。











【ウラオモテ】

1話 遭遇












「はい、じゃぁ教科書37ページを開いて」



黒板の前にて教科書片手に呼びかける。




私は私立の共学高校の国語の教師。




無難な人生選択の末、両親が教師だったことも有り、私は同じ道を選んだ。




公務員ほど無難な職業はない



………と、いう私の考えは甘かった。






ハッキリ言って全然私に向いていない。






よくテレビドラマである学園物のように熱血指導するタイプではない。



生徒一人一人と向き合って親交を深めるとかそんなことにも興味がない。




こうなったら結婚でもしてさっさと寿退社するしかない



相手もいないのに最近の私はそんなことばかり考えていた。







「―――はい、ここまでで何か質問は?」



教科書を一通り読んで生徒に問いかける。


けれど反応は何も返ってこない。





携帯を弄ってる子


雑誌を読んでる子


化粧をしてる子


おしゃべりをしてる子


寝てる子





……このクソガキども…


多少イラッとするけれど、これが今時の高校生よね、と言い聞かせて





「質問がないようなら次のページへ―、」


淡々と授業を進める。




カツカツと、黒板にチョークを走らせる音が響く教室で微かな話し声が聞こえてきた。







「ねぇねぇ、和樹。起きてよ」




窓際一番後ろの瀬戸和樹を起こす女子の声。




瀬戸和樹は起きて真面目に授業してる時の方が少ない。


私の授業もほとんど寝てるし、他の教科の先生が文句を言ってるのを何度も聞いたことがある。




1学期はそうでもなかったのに2学期に入ってから急にこの態度。




いったい何しに高校通ってんのよコイツ。








「ねぇ、和樹ってば」

「…んだよ、うっせぇな…」

「そんな言い方ないじゃん。今日の授業ほとんど寝てるくせにまだ眠いの?」

「眠いから寝てんだよ。起こすな」

「もうっ!!」







瀬戸和樹


モデルみたいなスタイルの上に顔も良い。


更に授業態度はこの通りのくせに成績は悪くない。



そして父親は大企業の社長。
母親はうちのPTA会長。





こんなんじゃ誰も何も言えたもんじゃないわ。









キーンコーンカーンコーン…

授業終了の鐘が鳴り、本日の業務は終了を迎えた。




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