放課後特訓

「よし、それじゃ始めるぞ」
「お、おう…!」
机の上に座ったボクは、そう言って袖の中でキュッと手を握りしめて目の前の喜一クンを見つめる。
喜一クンは楽しそうに笑いながら、口を開いた。
「この先生は誰だ!」
「バニラの先生!!!」
「夕哉、アウトー」

バシッ!

「痛い!!うえぇ…」

「何回言ったらわかんだお前…正解は、猫先生」
「だってバニラの匂いするから…」
そう言いながらハリセンを自分の肩でトントンして溜め息を吐く有坂クン。
ボクがあんまりにも先生の名前覚えないからって、今日は喜一クンが持ってきた特製フリップでお勉強会をすることに。
なったんだけど!!ハリセンなんて聞いてないぃいい!!!
「ま、やっぱりそうだよなぁー」
「うぇええ…頭撫でてくれるのはいいけどぐしゃぐしゃにしないでよぉ喜一クンん」
「お前は特訓に協力したいのか夕哉甘やかしたいのかどっちだ」
「両方」
有坂クンの問いにキリッと喜一クンが答える。
「むしろ有坂クンのがハリセンでパーンしかしてな」
「ん?」
「んっでもないです!!」
キラッてした!!覆面の下で何かキラッてした!!!見えてないのに!!!!
「お?ひょっとしてやきもちか?」
「次行くぞ、これは」
そう言って有坂クンが喜一クンの代わりに新しくフリップを立てた。
黒くて長い髪結んでて白衣着てて…保健室の先生なんだけど…。
「やお…きょー…」
顔はわかる!名前が出てこない!!
だからこの特訓してるんだけどさぁ…!
「きょー…ら」
「おーい、スルーすんな」
「わかんなくなっちゃった!わかんなくなっちゃった!!あとちょっとだったのにぃいいっ!!!」
「…ガチホが…」
「俺のせい!?いま俺に責任あった!!?」
「あたり前だろ。夕哉の脳みそはババロアで出来てる様なもんなんだから考えてる時に声かけたら飛ぶに決まってる」
「有ちゃんの中での夕哉どうなってんの」
全くだ。
「それにババロアで出来てると思ってるならハリセンでボクの頭ぶっ叩かなくていいと思うんだ!!」
「実際ババロアじゃないよな?」
「え?うん」
「ちなみにこれは八興鏡藍先生。で、きょうらんじゃなくてけいらんだからアウト」
バシッ!
「うぇえぇ!」
「やめろ有ちゃん!これ以上やったら夕哉が本当にババロアになるぞ!!」
「そんな弱い子に育てた覚えはありません。あと有ちゃん言うな」
「お母さんか!!じゃあ俺はさしあたり有ちゃんの旦那でありお父さ」

次の瞬間、ひときわおっきい派手な打音が響いた。

「…目一杯叩く必要ねぇだろ…」
保健室でもらってきた氷のうをほっぺに当てながら、喜一クンがボソッと呟く。
顔の横に真っ赤にハリセンの後が付いてて、すごく痛そう。
「悪い手がすべった」
「まぁいいさ、後で思う存分」
「次はこれだ」
「えーっと…」
青い頭…さかさまだけど…。
「ドラっ!!!」
思いっきり頭上からハリセン降ってきた!ズバァンッ!!って言った!!!
あと机から落っこちて後頭部打った!!
「うぇええぇ…っ!!」
「それは色々と禁句だ。正解はひじきえもん先生」
「…大丈夫かー…?」
「だいじょ、ぶ…」
よろよろしながらもっかい机に腰かける。
「次」
「銀有美先生!」
「正解」
「え?」
「やったーっ!!」
良かったー!!
「担任答えられなかったら飛んでたけどな」
「何が!?」
いまボソッと言ったけどすごい物騒なこと言ったね!!?
「冗談だ冗談」
「ハリセン片手の有坂クンだとなにも冗談に聞こえない!!!」
「担任だからかなんだ…飛ばなくて良かったな」
「だから何が!?喜一クンわかって言ってんの!?ねぇ!!?」
妙に爽やかな笑顔怖いよ!!
「次」
…グラサンに白衣…赤シャツ…えっと…。
「…スルメ…木」
「皇孝先生。アウト」
バシッ!
「うぇ!」
「次」
「久楼先生!」
「正解」
「前から知り合いなんだよねー」
「じゃあノーカンな」
「えっ?ずるい!!」
…若干身構えたけどハリセンは降って来なかった。
「次」
有坂クンは何事もなかったようにフリップを立てる。
…ホントにノーカンなんだ…さっきの点数になんないんだ…。
「うぇ…」
「あと5、4、3」
「ジ…ジル先生!」
「ジルヴァ・フロージ先生。…まぁ、セーフでいいか」
「やった!!」
「ちょーっといいか」
「あ?」
「?」
そう言って喜一クンが有坂クンと交代する。
何枚かあるフリップから一枚選り出して、机に立てた。
「ついでにもう一問、この人だーれだ」
「ヴァナディースチャン!」

結論、女性名に関しては記憶するらしい。って、言われた。

有坂「悲しくなってくるな…」
喜一「根っからのホストだよお前は…」
夕哉「えっ?なに!?何の話ぃっ!!?」
荒井「そこの三人!もう下校時刻は過ぎてるわよ!!早く下校しなさい!」
有坂・喜一・夕哉「「「はーい(!)」」」


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