珍しい日

今日はどうにも、調子の狂う日であります。
放課後の教室を見回り、残っていた生徒を校内から追い出しながら口の中で呟く。
まず第一に、生徒からの没収率が悪い。
言わずもがな、甘いものに限った菓子類の没収率だが、今日はいつにも増して悪いのだ。
偶然で済まされる割合ではあるものの、量が少ない事に相違はない。
没収したチョコレートの、最後の一欠片を口に含む。
本日没収したものはこれで終了した。
残る甘味は自らの所持品である角砂糖と金平糖のみ。
嗚呼、儚い。
包み紙を捨てる為に、二年二組へ足を踏み入れる。
と、机に俯せている生徒を発見した。
後ろで結わえた黒髪に、身の丈に合わない白衣。
二年二組の生徒、猫市。
熟睡しているらしく、自分がそう視認できるほどに顔を寄せても規則正しい寝息が乱れることはない。
陽光の差す昼はまだしも、夕暮れ時には、まだ肌寒く感じるであろうこの時期に、全く暖房の効いていないこの教室で眠れるものだと関心すら覚える。
揺り起こそうと手を伸ばした時、机から一枚のカードが床へ落ちた。
カードを拾い上げ、そこに書かれていた文字の羅列を目で追うと、成る程、複数の机と机を向かい合わせ、大きなテーブルに見立てた様なこの状態にも合点がいった。
そろそろ彼女を置いて退出してしまったことに気付いた生徒達が戻ってくる頃合だろう。
懐紙の端を細く引き裂く。
その懐紙に幾つかの金平糖を包み、細く裂いた切れ端で口を結ぶ。
机脇に置かれた鞄の、教科書の上へと包みを滑り込ませる。
「お誕生日おめでとうございました、猫市さん」
耳元へ口を寄せ、そう、再び口の中で呟いた。







猫市さんはぴばでした!!遅れてすまん!ホントすまん!!

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