受難な日

「うわぁっ!!」
「きゃっ」
…人が、鮮やかに宙を舞った。
私の抱えてたプリントが散らばると同時にその人の白と黒のボーダーパーカーのポケットから何かがバラバラ落ちる。
ゴシャッと嫌な音がして、おそるおそるその人に近づいてみる。
「だ、大丈夫ですか…?」
「だ、だいじょぶ…」
そう言って顔をおさえながらフラフラと立ち上がるボーダーの人。
いま、見間違えじゃなかったら明らかに顔面からダイブして…。
「本当に大丈夫ですか?」
「あっ!ぶつかっちゃってごめんね!ケガしてない!?大丈夫!?」
すごく、こっちのセリフです。
でも心配そうに顔を覗き込んでくるあたり、大丈夫そうだ。
鼻の頭真っ赤だけど。
「大丈夫ですよ」
「よかったぁー…あ、プリント拾うの手伝うよ!」
そう言いながら散らばったプリントをかき集める…先輩?後輩?
「…うぇ」
見事なまでに袖が邪魔してプリント拾えてないー!!
な、何がしたいのこの人…。
「あの、大丈夫です。自分で拾いますから…」
「ごめんねぇ…」
そう断ると、しゅん…と頭を落として、うなだれた。
…何年生なんだろう、この人。
同学年じゃないことは確かなんだけど…年上か年下か全然わからない。
「あ、じゃあお詫びにチョコあげるよ!」
はい!と元気よく出された手は空っぽ。
「「え?」」
…なんか…右側から…妙なプレッシャーが…。
ゆっくり振り向くと、見覚えのある真っ黒な人影。
「没収であります。キシッ」
「うぇええぇえっ!!!」

…とりあえず、一番受難だったのは、久楼先生にチョコレート全部没収されたこの人だと思う。


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