ゆらゆら、ふわふわ。
深いふかい海の底なのか、広いひろい宇宙の隅なのかはわからない。なにかに柔らかく包まれたような心地で漂い続ける。
「……て、………」
目を閉じたまま浮かんでいることが、きっとわたしのしあわせ。こうして身を委ねてからずっと。そしてこの先もずっと。
「…おきて、ねえ、………」
遠くでわたしを呼ぶ声がする。でもきっとそれに応えてはだめ。かなしい世界にまた戻らないといけなくなっちゃう。だからわたしは目を、瞑る。
「……僕だよ、起きてったら」
懐かしいような暖かいような。
わたしはどうしてここにいるんだっけ。どうして世界から逃げてきたんだっけ。
やめてやめて、わたしを起こさないで。
「伊織」
わたしの世界が壊れて、目が、醒めた。
「おはよう、僕のお姫様」
「でゅ……ん…」
「ん、僕だよ」
「デューン…!」
長いながい眠りから覚めたようだ。気怠い身体を起こした先でデューンが微笑んでいる。
「なんで?ここは…?」
「僕にもよく分からないんだ」
よくわからない状況、よくわからない空間。ここがどこなのか、どうしてここにいるのか、私に向けて光を放った彼女達はどうしているのか。
さっぱり思い出せない。
「伊織…?」
「ううん、なんでもない」
でも、私の前で穏やかに微笑むデューンだけは本物。ここにいるよって言ってくれる言葉は本当。
デューンがずっとそばにいてくれるなら。ここがどこだって構わない。一緒にいるのをずっとずっと望んできたんだもの。
もう置いていかないで。ひとりにしないで。
泣いて縋る私の髪を撫でる手は誰よりも優しかった。この手があれば、私はきっとどこでだってどこまでだって生きてゆける。