日曜日の昼下がり。
ぽかぽかと温かい陽気に包まれた事務所の中に、今日も今日とて悪魔と悪魔使いが居た。



「ベルゼブブさんって、力無さそうですよね」



突然そんなことを言い出したさくまに目を剥いたのはもちろん指摘された本人である。
確かにー!と同調したアザゼルの首は瞬間的に飛ばされる。



「…さくまさん、それはどういう意味ですか」

「あ、職能の方じゃないですよ。
腕力的な、そんなのです」

「ほー…?」



ペンギン姿で目を光らせるベルゼブブに、さくまは気づかない。
アザゼルは飛んだ首を探してうろうろとさ迷っているまま。



「何故そう思われたんです」

「偏見かもしれないですけどほら、貴族って全部周りの人が物事してくれるイメージなんです。
だから、スプーンより重いものなんて持ったことない、みたいな?」

「みたいな?じゃねェよクソ女」

「あー、さく、そういうこと言うたらあかんのよ?特にべーやんみたいなプライド高いタイプは後がめんどい…」

「同調しといて今更、アザゼル君も余計なことを喋らないでください」

「ぎゃー!痛い痛い!ちょ、やめて、わしの顔粉々にすんのまじやめて!」



端から見ても、ベルゼブブの不機嫌指数は限りなく上昇していた。
けれどこのペンギン姿では、満足に自分自身の力を証明できないことを、彼は分かっていた。
だからこそ余計腹立たしいのだ。



「…今は笑っていればいいですよ。
貴女が私に言ったこと、きっと後悔させてやりますから」

「え?なんか言いましたか?」

「覚悟してろよビチクソ女!」

「うわ、ちょ、なんですか!いきなり暴れないでください!」



ピギャアアス!と長閑な午後を裂く雄叫びがあがる。
少しずつ復活してきたアザゼルは、あーあ、とうっすら笑顔を浮かべた。



「べーやんがキレた」