小説 | ナノ
「名前。」

「ん。」


その様子を見ていた菊丸がぽつりと呟いた。


「・・・なんか、夫婦みたい。」

「・・・な、ななななに言ってんの、っ!」

「だって、不二は名前しか呼んでないのにお前すぐシャーペン出したじゃん?」

「そんなのなんとなくで分かるし!」

「うんにゃ。お互いのことをわかってないとできないよ。」

「そ、そそそそうかもしれないけど・・・・っ!」

「・・・名前、僕と夫婦みたいって言われるのは、嫌かい?」

「そ、そんなわけないじゃない!」


ひゅーひゅーと口笛を吹く菊丸。
そうやってからかって、何が楽しいんだか!
・・・別に、不二くんと夫婦が嫌なんじゃない。むしろ、嬉しい。
だけど、私は皆が思うほど不二くんを分かってない。
不二くんは異常に女の子にもてもてで、私はいつも不安で、少しでも彼の隣にいないと、彼を誰かに取られてしまう気がして。




ざわざわと人々の楽しげな会話が広がるハンバーガーショップ。
上品に食べる彼は、私を見てくすりと笑った。


「そんなにがつがつ食べて、どうしたんだい?」

「・・・だってお腹空いてたんだもん。」

「ふふ、可愛いね。」


思考停止。
脳内爆発が爆発したように心臓がどくどくいう。
なんでそんなことをさらりと言うの!


「赤くなってる。」


あああああいわないでいわないで!
恥ずかしい、どうしよう!


「・・・ねぇ、僕、不安なんだ。」


い、いきなりどうしたの?


「名前が本当に僕のこと好きなんだろうかって。」


うえ?


「いつか、他の誰かに取られる気がして。」


・・・え、私が?


「僕と、ずっと一緒に居てくれるかい?」

「そ、そんなのこっちのセリフだよ!だって不二くん女の子にもてもてだし、私なんかより可愛い子いっぱいいるし、いつか捨てられるんじゃないかとか!夫婦って呼ばれるたびになんか不安で、もし捨てられたら私ストーカー行為とかしちゃうんじゃないかとか、でも不二くんが嫌ならやめようとか、っぁ、」


力強く引き寄せられて彼と私との距離が埋まる。
しばらく固まって、静かに離れてゆく。

ハンバーガー、おいしいね。なんていつもより嬉しそうに笑って言うから、私は何も言えなかった。


ラブバード
▼title by Aコース様
▼不二くんお誕生日おめでとう!ちか

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