地獄の追いかけっこ、よーいどん!
そろり、
襖を開け、辺りに誰もいないことを確認し、姫は部屋を出た。
(お…お腹すいた…)
ススス…と、足音を潜め、全神経を張り巡らせながら目的地を目指す。
もし誰かに見つかったら…「あれー?姫ちゃんなにやってんの?」
…見つかってしまった。
「佐助…」
そうだよね、普通に考えて一般的な姫の私が忍の気配に気付けるわけなんてないよね…
姫はふふっ…と笑って佐助を見た。
「なにって城内散歩してるだけだよ?暇なんだもん」
「そう?でもそれにしては「佐助も今仕事中でしょ?じゃあね」ちょ…と、もー…」
少しでも長く話しているとボロが出そうなので、強制的に区切って私はその場を後にした。
「姫ちゃん、なーんか企んでそうだったけど…また旦那の隠してあるおやつ狙ってたりして…」
いや、それはないか。この前こっぴどく叱られてたもんな…
ふ、とついこの間の出来事を思い出し、ナイナイと、ふるふる首を振って佐助はその場から消えたのだった。
―――
「ふぅ、びっくりした」
佐助に見つかってしまったが結果的には兄、もとい、幸村に見つからなければ良いのである。
その後、数人の女中とすれ違いながら姫は目当ての場所へと辿りついた。
ドキドキと高鳴る胸を抑えながら姫は一歩一歩近づいていく
…カラッ
手汗を拭って棚の引き手を開ける。
静かな辺りにはとても大きく響いたような気がした。
中には幸村の秘密の団子
まぁ、この棚は幸村の甘味の隠し場所なのである
バレバレだけど。
(あった!)
皿に一本乗っているそれをパクッと一口。
(んっまぁーい!)
串を持っているのとは逆の手で頬に手を添える
兄、真田幸村が、
戸の隙間から見ていたとも知らずに…
…カタ
「!!」
微かな物音にビクッと肩を震わせ振り返ればジッ…とこちらを見ている般若…いや、兄、幸村。
「ひっ…」
一瞬で顔の血の気が引き、恐怖で後ずさる
「姫…、今…某の団子を食べたな…?」
「い、いや…「
食べたな!?」はっはいっ!」
「
許さんっ!」
「…!!」
タッと間合いをつめてきた兄の手を必死にすり抜け、廊下へと飛び出し思いっきり駆け出す
「姫っ!待つのだ!!」
「いっ、嫌ですっ!」
地獄の追いかけっこ、よーいどん!(あらー?姫ちゃんまた旦那の団子食べちゃったわけ?)
(佐助!助けてっ!)
(佐助ぇ!貴様も共犯か!)
(自業自得でしょ…ってなんで俺まで!?なんもしてないってぎゃーーーっ)おわり
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素敵企画参加、ありがとうございます!
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