Clap



「それじゃあ、また…。次会えるのは一週間後ですか…」
私の家から少し離れた十字路で、運転席に座った松永さんと車のドア越しに立つ私。
端から見れば父と娘…言ってしまえば少し若いおじいちゃんと孫でも通ってしまうだろうが、私たちはれっきとした恋人同士、だ。
…例え、私が高校の制服を着ていようと援助交際なんかじゃない。決して!!断じて違う!
「そんな顔をするな姫、仕方ないだろう」
眉を下げたまま、拗ねた表情をしているであろう私に対して困ったな、と呟きながらも薄く笑っているので“可愛い子だ…”とかなんとか思ってたりする気がする。うわ、自分で言ってて恥ずかしいこれ…!なんかむずむずする!
「だって…、…っ!?」
そんな羞恥心を隠すように駄々をこねる真似でもしようと声をあげれば、手が伸びてきたなと思うと同時に頭をグイ、と引かれた。
唇に触れた柔らかくて暖かな感触に私の思考は直ぐに停止。
触れただけの軽いキス。
でも、その後の色気漂う笑みに私の頭はくらっとした。
「…全く、卿といると私は静かに老ることも出来ないようだ。…気をつけて帰りたまえ、これ以上共にいると歯止めが効かなくなりそうなのでね」
私の頭を一撫でして、そのまま去っていく松永さん。
その車が見えなくなるまで…言ってしまうと顔の熱が取れるまで、車を見送ってから、私は家までの道を歩き出した。





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「なんだ…、お前まだあのおやじと付き合ってたのか」
「お、おや…じ」
「他にももっといい男いんじゃーん?例えば俺様とかって、いっでぇっ!」
「寝言は寝てから言え」
「かすが…、気絶 させちゃ流石に佐助でも寝言も言えないよ…」
あれから数日、わりかし仲のいい二人が珍しく時間を空けてくれたので、何か甘いもんでも食べに行きますかー、と街に来ていた。
かすがの“おやじ”発言に若干ショックを受けながらも、噴水を眺めながら友達と食べるクレープのなんと美味しいことか…!
「いてて…」なんて起き上がった佐助とかすがの、本人達に取ってはふざけてるつもりなんてさらさらない、他人から見たらただのコントを眺めながら、口いっぱいにもぐもぐとカスタードといちごのたっぷり入った熱々のクレープを頬張っていればポケットから携帯のバイブ。
画面を見ると松永さんからの新着メールだった。
日暮れ時、空が綺麗な夕日を描いているので、仕事が一段落ついたのかななんて思いながらメールを開けば、前置きの後に“すまないが、しばらく忙しくて会えそうにない”の文。
確かにそんな話はしていたからいつか来るんじゃないかとは思っていたけど、でも…松永さんなら忙しくても、少しの時間でも…絶対会ってくれる、なんて僅かな期待はしてた。でも、松永さんは大人だし、仕事の内容もわからない子供の私が今わがままを言って困らせる事も出来ない。

“お仕事、頑張ってください”

メールを返した後、しょげた私に気づいた二人が声をかけてくれた。
「大丈夫か?」
「うん…松永さん、しばらく会えないんだってー」
「まぁ、仕事も大変そうだしねあの人…」
意外と心配性な二人に心配かけまいと明るく振る舞おうとしたが、予想以上に堪えたらしい、目と口は笑っても眉が下がってしまった。
それを見たかすがが、しかめっ面で口を開こうとしたところ、何かに気づいた佐助がそれを塞ぐ。
そんな事が起こってるとも知らず、斜め下を向いたままの私を、不意に後ろから誰かが抱き込んだ。
「っ!?」
当然の事にびっくりして肩が跳ねる私の耳元で囁かれる言葉。
「すまない、先程のメールは冗談だ」
「えっ…」
この香りと声は…なんて分かりきった答えを導き出す前に私の視界はくるりと回った。
「悪いがコレは貰っていくよ」
「まっ、松永さん!?」
そのまま持ち上げられた私は片腕で抱きかかえられ、やれやれと見送ってくれる二人に手を振り返しながらも頭がついてゆかず、気づいたらいつもの車の中の助手席に座っていたのだった。



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20111216
Twitterより


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