「……何してるんだ」
一風変わった出迎えにネジは足を止めた。
いつもならドアを開ければ満面の笑みで「いらっしゃい」と迎え入れてくれるテンテンが、何故か今日は大人しい。
それどころか腕で自身の額をひた隠しにする姿はネジでなくとも気になるわけで。
「何してるんだ」
ネジは2度目の疑問をぶつけた。
そう問いかけても返答は「気にしないで」の一点張りで、ネジは益々不信に思うことになる。
「気にするなと言われて気にしない方がおかしいだろ」
「べ、別に隠し事してるわけじゃ……」
「じゃあさっきから何なんだ、その腕は」
そう強引に腕を掴めば彼女から短く声が上がる。
その悲鳴にも似た音に多少なりとも罪悪感を抱きながら、彼はテンテンに詰め寄った。
「久しぶりに会った恋人に顔も見せないつもりか」
「や、そうじゃなくって……!」
「隠さなくてはいけない理由があるのか」
「だから、そうじゃな……っ」
からかい半分のネジとは対照的に彼女は本気だ。
普段なら言わないであろ台詞を駆使して崩しにかかるネジに観念した彼女は、視線を床に落とした。
「…………前髪」
「は?」
「前髪、切りすぎちゃったからやだ……見せたくないの」
それから過ぎるほんの少しの数秒は、テンテンにとって恐怖でしかなかった。
その上沈黙を破ったのがネジの堪えきれない笑い声だったから彼女の体温は益々上昇することになる。
「もっ、もう!だからヤなの、ネジのバカ!」
「何も言ってないだろ」
「笑った!」
「笑ってない」
まだ何も見てないんだから……と続けるネジはテンテンの腕を掴む手に力を込めた。
ここまで来ればお互いに意地と意地の勝負になるのか、端から見ればただじゃれ合うだけの変な構図は続いている。
「絶対笑う」「笑わない」、そんなやり取りを繰り返し繰り返し……。
「あ……っ!」
最終的に力負けしたテンテンが先程まで必死に隠していたものをネジの前に晒すこととなった。
しきりに前髪を気にしながら、反対の手で彼の体を突っぱねる。
確かにいつもより短い気はするが、おかしくはない。むしろ可愛いんじゃないかと真剣に考える自分の思考に気付いたネジは苦笑する。
結局のところ彼女に勝てることなんて、何一つ無いのだ。
長い指が、未だ素直に顔を見せてくれないテンテンの髪を柔らかく撫でた。
それからゆっくりと動く彼女のタイミングを見計らって、取られた距離以上のものを奪い返す。
自身の腕の中に収まった恋人の表情が見えないのは残念ではあるが、おそらく自分だけに与えられたであろう特権に甘んじることにした。
そして与えられた権利は行使せねば、と。
テンテンの額に小さな口づけを落とせば、まるで言葉を忘れたみたいにパクパクと彼女の口が動く。
「キスしやすくなって、ちょうど良いんじゃないか」
微笑んで言ってのける彼にまたもや一悶着起こりそうなのだが、彼女はしばらくその場から動けそうになかった。
あの年末のアレの頃に載せたアレです(^q^)
ほのぼのでイチャイチャLOVEなネジテンがやっぱり私は好きだ!大好きだ!!
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