すっかり日が沈んだ頃、木ノ葉の一角に2人の影。
「ずいぶん遅くなったわね。遅刻だわ」
「まさかあんなに長引くとはなぁ」
久しぶりに皆で集まろうということになり、指定された居酒屋へ向かうテンテンとシカマル。
一緒にチームを組んでの任務だった為、報告書を提出したその足でやって来た。
今にも「めんどくせぇ」とか言い出しそうなシカマルはポケットに手を突っ込んだまま。
「でも意外ね。こういうのちゃんと来るのね」
「……行かねぇ方がめんどくせぇから」
どういう意味と聞き返すテンテンに馬鹿たちが煩いと一言。
「馬鹿?」
「ナルトとかキバとか……っつーか、ナルトとキバ」
クスクスと他愛ない会話に笑いながら歩いていると目的の場所に辿り着いた。
きっと賑わっているに違いない。
彼が言うところの馬鹿2人のおかげで。
テンテンは扉に手をかけ、大きく開いた。
「皆お待たせー!盛り上がって…る?」
「テ、テンテンさん!」
何故か必死な顔をしたサクラに名前を呼ばれたテンテンは、自然と首を傾げる。
「……場所、間違えたかしら」
「それなら嬉しいけどな」
妙に息の合った2人は、扉を閉めて何も無かったことにしたい気持ちを抑え店の中へと足を踏み入れた。
いつもは盛り上げ役のナルトとキバが静かだ。と言うより冷や汗を掻きそうな勢い。
借りてきた猫みたいな2人の前には、予想もしていなかった人物が腕を組んでいる。
「…………ネジ?」
いつも通りの彼がそこにはいた。
益々状況が分からなくなったテンテンの隣でシカマルが溜め息を吐いた。
「……あの馬鹿」
「ナルトとキバが無理にお酒を飲ませたみたいで……」
「え?酔ってるの?」
驚くテンテンにコクンと頷くサクラ。
「さっきからずっとキバとナルト相手にお説教始めちゃって。それは自業自得なんで良いんですけど」
私たちじゃもう無理なんです。と続けるサクラの顔は真剣だった。
何とかしたいが、テンテンにとっても初めてのこと。
どうすればいいのか悩んでいると。
「テンテン」
テンテンを見つけたネジがこちらを向いた。
彼女を見つけた白い瞳が和らいだのは確かなのだが。
隣にいる男を見た瞬間、また鋭い視線に変わった。
「……シカマル」
低い声で呼ばれたシカマルが今度は嫌な汗を掻き始める。
「お前、テンテンとずっと一緒にいたのか」
不機嫌なオーラを纏って一歩一歩近付いてくるネジ。
「ただの任務だって言…」
「うるさい。オレは許可した覚えはない」
慌てて述べた正論も、もちろん通用しない。
目的の人物を腕の中に収めると、ようやく大人しくなり。
「……テンテン。待ってた」
「ふふ、酔うと素直になるの?」
照れ笑いと苦笑を浮かべたテンテンが小さくシカマルに謝った。
ダンッ!と勢いよくジョッキが置かれ。
「何だ、シカマルまで酔ってんのかー?」
「烏龍茶で酔うかよ!」
最悪だ最悪だと繰り返すシカマルの目の前で、ナルトとキバは呑気に馬鹿らしい会話を繰り広げる。
反省した様子が見えない2人にシカマルのこめかみがピクリと動き。
「お前ら、しばらく焼き肉オゴりな」
「はぁ!?」
「オレとチョウジの分」
「な、なんでチョウジが入るんだってばよ!?」
「知るか。自分に聞け」
「おいシカマル!シカマル!!」
「無視するなってば!」
ただ1人の中忍の胸に小さな傷を残して、今日の宴会はお開きとなった。
「なぁチョウジ。明日から焼き肉がタダで食い放題だぞ」
「シカマル、それは確かな情報なんだろうね?」
「ちょ、ちょっと待てって!」
「そーだってばシカマル!早まるんじゃねぇ!」
End
→あとがき
≪ ≫
[戻る]