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ざっくざっくと穴を埋めていく食満。それを眺めるわたし。
空を見ると抜けるように綺麗な水色。きれいだなあ。どこか他人事のような思考。

「なあ」
「なに?」
「寒く、ないか」
「大丈夫だよ」
嘘。本当はすごく寒い。
腕をさすっても全然あったかくならない。可笑しいな、もうすぐ夏になるのに。
「ごめんなあ、寒いよな。なんかかけるもんでも持ってくりゃあよかった」
ざくざく。
穴を埋めながら食満は謝る。
大丈夫だってば、とわたしは見栄を張った。
「名前」
「うん」
「名前」
「うん。聞いてるよ」
「守れなくて、ごめんな」
ぽたりぽたり。
零れる涙は食満のもの。水色の、きらきらした涙。
ごめんな、守れなくて。食満はそうやって自分を責める。
謝らなくていいのに。泣かなくていいのに。
「痛かったよなあ、名前」
「………」
「あのとき俺があそこにいたら、そうしたらお前は」
死ななかったかもしれなかったのに。
血まみれになったわたしの身体は、食満が掘った穴に寝かされている。
ざくざく。
ゆっくりとその上に土が被せられる。どんどん寒くなっていく身体。
ああ、寒いなあ。なんでこんなに寒いんだろう。
もうすぐ夏がくるっていうのに。こんなに綺麗な水色の空で、太陽だってさんさんと光を降り注いでるっていうのに。
「食満、埋めてくれて、ありがとね。助かったよ」
食満に届かないこの言葉。届かなくてもいいの。聞かれなくても。
ただ、わたしが言いたいだけ。
「けま、食満。……留三郎。大好き」
「好きだ。愛してる」
被さるようになった言葉は同じような内容。うれしいなあ、そう思って笑ったら涙も一緒に出てきた。
「死にたく、なかったなあ」
小さく呟いても叫んでもどうにもならない。死人は生き返れない。なにがあっても。
涙を止めるためにもう一度空を見上げる。
どこまでも続いていそうな水色の空。ああ、眩しいなあ。目を閉じる。
「あっちに逝っても、浮気するなよ馬鹿」
「当たり前でしょばーか。そっちこそ、浮気しないでね。…待ってるから」
さようなら愛した人。また会う日まで。








コバルトブルーに決別






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