「砂糖を吐く様な恋がしたい」
「…ちょっと待ってろ。おばちゃんから砂糖を借りて来る」
「待て。ものの例えよ、た・と・え」

急いで三郎の肩を掴む。たとえ話を真に受けられると困る。

「でも、名前。どうして恋がしたいんだ?」
「どうしてって言われても…」

正直に言えば、私は今、恋をしている。
彼の名は善法寺伊作先輩。
実習でご一緒させてもらった時、あの優しさと逞しさにうっかり恋に落ちたのだ。

「でも、名前には恋は無理だな」
「何でよ?」

三郎が人差し指を挙げる。

「ひん曲った性格」

今度は中指が挙がる。

「ケチ」

薬指。

「女々しくない」

最後に小指。

「更には、どんか…「これ以上言わなくていい!!」

親指も挙がりそうだったが、私は話を遮った。だって、どれもこれも事実だから。

「三郎に言われると、二倍むかつく」
「人間、事実を突かれるとそうなるものさ」
「どうして、雷蔵君と同じ顔なのに、三郎を見ると暴力的な気持ちがこみ上げてくるのだろう?」
「名前、そういうことは口に出すもんじゃない」

ましてや本人の目の前でと、三郎はやれやれとした顔をする。

「じゃあさ、三郎は恋をしたいって思わないの?」
「まぁ、な」

ニカッて笑われる。

「私は既に恋をしているからな」
「誰に、誰に?」

つい、身を乗り出してしまう。三郎との距離が近くなる。

「誰?どんな子?」
「まぁ、落ち着きたまえ」

三郎がゴホンと咳払いするので、私は背筋を伸ばして正座した。

「その女はな、まずは鈍感で」

また、人差し指が挙がる。

「人の話を全く聞かない」

中指。

「女かよって疑う時がある」

薬指。

「三郎って、結構マニアックな子を好きになるのね」
「まぁ、話は最後まで聞け。だが、優しくて」

今度は薬指を引っ込めた。

「一緒にいて飽きない」

中指を引っ込める。すると、必然的に人差し指が残る訳で。

「で、誰なのよ」
「お前だよ、名前」
「名前かぁ…って私!?」

うむうむと頷いていた顔を上げると、三郎の人差し指が私を指している。

「どうした名前」
「びっくりして声が出ない」

口をパクパクしたり、目をパチクリしてみるけど、三郎の人差し指は紛れもなく私を指していて。

「人違いじゃない?」
「全く」

彼のニヤリとした笑み。ただ、その顔は真っ赤になっていて。

「さぁ、名前。私と一緒に砂糖を吐く様な恋をしよう」

両手を広げた三郎に飛びついたのは言うまでもなく





色の人差し指
それは運命の羅針盤でした













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