colorless | ナノ


薄情な子供




 そこに存在してくれるだけでいいんだよ。何かあれな言い方すると貴方は私の全てなんです、ってやつ。私が言うと寒気がするよね、自覚してるから大丈夫。いやあまり大丈夫じゃないねこれ、でもまぁ何というか彼がこの上なく大切だっていうことは確かで、紛れもない事実で変えようのないこと、もう変えられない、ずっと前からそう決まってる。彼がいなかったら私もいなかったに違いない、何だか言ってて自分が痛い子みたいになってきたけどこれ全部本当だからね。本人には真っ直ぐに言えないかもしれないけど、すごく感謝してるんだ。少しでもその感謝を伝えるための好きなんだ。中身がないなら中身を作るよ、すっかすかの言葉の中身を。リボンで包んだりとか可愛らしいことは出来ないけど、ね、飽きるくらいにそればかり送り続けてる。それを相手がどう受け取ってるかは分からないから、結局自己満足なんだけど、ほんのちょっとでもいいから伝わってたらいいな、なんて。ねぇお兄さん、伝わってるかな、私の気持ち。君のことだからあまり期待は出来ないかもしれないけど、それでも私、好きなんだよ。もうどうしようもないんだこの気持ちは、私が生きてる限り死なない気持ちなんです。つまりこの気持ちを殺したくなったら私を殺すしかないんだよ。ま、まぁぶっ殺すとはよく言われるけど、実行できた例がないから多分大丈夫、私も気持ちも死なない死なない。あー、でも私の気持ちに変化がなくてもさ、お兄さんがどうかはわからないよね、だって君ある日突然ふらっといなくなっちゃいそうなんだもん。蒲公英の綿毛みたいだね。そう言ったら頭引っ叩かれたよ、確かにお兄さんに蒲公英の綿毛ってちょっと可愛らしすぎる形容だよねぷぷぷ。それでも、私が思うにお兄さんはそんな風な人なんじゃないかな、突然いなくなっちゃいそうな。儚、くは、ないけど、消えちゃいそうな。お兄さん消えたら私はどうなるかな、取り乱すかな、それともお兄さんと長い間、それこそ十年くらい会わない時期があったから大丈夫かな。けどもうこうやって会っちゃったからどうにもならない気がするね。やっぱりお兄さんがいなくなったら私もどっかいくのかな。ついていけるなら行きたいけど、許してくれるかどうかも微妙だよね。もしも、仮に、お兄さんに私が好きってたくさん言って繋ぎ止められるならいくらでも何度でも言うのに。そんな言葉に縛られないお兄さんだから、そういう所も好きだよ。大好きだよ。誰よりもずっとずっと好きだよ。



「おにーさん、雹お兄さん、好きだよ」


「うるせーよ聞き飽きたっつの」


「じゃあもっと言うね」


「耳にタコができら……」



 そんな他愛ない会話を、明日もできるといい。明後日も明々後日もその次もずっと、出来るといい。せっかく君と会えたんだ、私がこんなにも欲深くなってしまったのはきっとその所為。駄目、かな、でもずっと我慢してきたんだから、このくらい望んだって、いいでしょう。


fin.
11.0508.
ダイチ様宅雹くんお借り。紅視点。つまりこの上なく好きですってこと。大好きです、これからもよろしく。
title by 虫喰い