無題 1218 (05:19)
(意味不明)
分からない。分からない。ただ視界が認識するのは赤。自分から流れ出た赤だ。
それから角。よくよく見ればそれはついさっきまで自分の頭から生えていたものだ。鏡で見たことがあるのと同じ形状をしていた。それが今はどうだろう。目の前に転がっている。赤を零して転がっている。
そこへ、ざ、ざ、と地面を踏み締める音が近づいてくる。聞き覚えのある足音ではあるが、少女はそれをただ記憶として留めているだけなので、特に反応はない。
ざ、ざ、ざ。足音は立ち止る。通りすがりの彼は言った。
「幾何学的特徴、角子。でも角ない。…ただの子になる?」
こてん、と首を傾げた彼は、不思議そうに顎に手を当てる。
ざ、ざ、ざ。また他の足音が近づいてきた。これにも聞き覚えがあった。その足音の持ち主はやはり立ち止まると、足元に広がるいくらかの赤を見下ろして、つまらなそうに肩を竦めた。
するとその場に膝をつき、小さな小さな彼女の頭にぽすりと手を置いた。地を見るばかりの少女の目には、彼の膝が赤で汚れていく様がよく見えた。
神経は痛みを訴えている。頭のそこかしこから流れる赤の音がどくり、どくり、聞こえるような気がした。
そっと頬に手を添えて顔を上げさせた男の、空色と、鮮やかなマゼンタが視界を彩る。彼はいつも通りに笑って、こう言った。
「一つ貸しにしておいてあげるよ、角子」
頷きもしない少女と、どこか楽しそうな男を、頭に螺子の刺さった少年だけが、不思議そうに見下ろしていた。
(ちゅとさん宅ニコラさん、たてさん宅ケンちゃんお借り!)
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