星と空の方程式 | ナノ




ええ天気やなぁ

窓の外を見ながら思った。
今日みたいな日は授業が退屈や。
世界史なんて尚更

いつも目を向けてまう席を見るとそこに人はおらへん。
植月さん、どこ行ったんやろか…
今朝はちゃんとおったんやけど、3時間目の今はおらんくなっとった。
保健室やないと思う。
体調悪そうではあらへんかったはずやし。
何となくやけど…

…いやいや、どんだけ見とるんや、俺


「先生…あかん、頭痛い」

「は、お前がか!?まぁいいぞ、行ってこい」

何気失礼な言葉には目を瞑り、教室を出た。
頭が痛いのは恋煩いやからなんて口が裂けても言えへん。
あながち嘘やなく痛む頭を押さえる。
保健室行ってもええけど、この微妙な体調で寝かせてくれるやろか
しかも恋煩い
…どう考えても無理やろ。


ふと植月さんが気持ち良さそうに歩いとる華月の裏が脳裏に浮かんだ。
今日ええ天気やし、あそこでサボるんも悪ないな
もしかしたら植月さんおるかもしれへん、なんて無駄な期待を胸に歩き出した。




「あれー、忍足くんもサボり?珍しいね」


お、おった…!
ほんまにおったわ、って
前もこんな反応あったな
デジャヴ?

華月の裏には壁にもたれて座る植月さんがおった。
我ながら直感って恐ろしいわ

植月さんは隣に置いとった菓子をどけて空けてくれた。
隣どうぞって笑いよる。
え…ええ、す…わって、座ってもええん?
お言葉に甘えて、と座ると菓子のええ匂いがした。
俺にもくれるらしく、飴ちゃんやらガムやらバラバラと手に乗せてくれたんやけど、そん時に触れた手先がじわじわ熱くて…
それどころやあらへんわ
ポンっと開けられた飴の袋の音がやけに響いとった。

それからは会話がほとんどあらへんかった。
初めは何か会話せなあかんって焦りおったけど、隣の植月さんはなんや楽しそうな空を眺めとるから俺もまぁええかって。
気ぃ抜かれとる。

俺がどんだけ心が落ち着いてへん時も、植月さん見ると不思議と心が静まる。
なんやのんびりしとるとこがよう効くっちゅーか
俺は植月さんのそういうとこが好きやなぁと空を見ながら思った。
……そして赤くなってもうた
恥ずかしい


気付くと12時やった。
4限の途中ってとこやな


「私ね、空を見るの好きなんや」

ふと植月さんが呟いた。
隣を見るとにっこり笑って俺を見とった。

「流れる雲とか、少しずつ変わる色とか、見てて飽きひんの。私って忍足くんもよう知っとるように何やっても遅いやろ?実は結構それがコンプレックスなんやけど、ゆっくり姿を変える空を見とるとそれでもええかなぁって思えるん」


ただ、隣におっただけやった。
ほんの1時間や
やけど…

気付いたらどうしようもなく植月さんを好きになっとった。
いや、前からこれ以上あらへんってくらいのつもりやったけど、もっと近付けた気がして、もっともっと好きになって
どうしようもなく、それを彼女に伝えたなった。


空を眺めて小一時間

心臓の音が俺の足より速く脈打ちよる








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