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憎らしい程に爽やかに輝く太陽を睨みつけ、朝の冷たい空気を肺いっぱいに吸い込むとふくらはぎが痛む程に急ぎ足で家路に着く。
その忙しない脚はまるでモーターのように俺の脳みそまでフル稼働させ、アパートの鍵を開ける頃には頭も足も疲れ切っていた。
「…なんでこんなに朝から疲れないといけないんだ」
掠れ切った己の声に苦笑いを浮かべ、部屋に入り、自分のベッドに仰向けに倒れこむと酷使した腰が痛む。
何故俺がこの優雅な日曜日に朝帰りをかましているかというと、言わずもがな、昨晩一発ヤってきたのである。昨晩二年近く付き合っていた彼女に振られた俺は何をトチ狂ったのか新宿にあるゲイバーに足を運んだのだ。
ゲイバーに入り、酒を思い切り煽っていると「なにか嫌な事でもあったのかい」そう話しかけられた。その声の方を胡乱気に見遣るとそこには色気の溢れる男前が隣にすでに腰掛けていた。コイツはきっとモテるんだろうなあ…と思うとなんだか涙が出てきて、ぼたぼたと泣き始めた俺をその男前は颯爽とホテルに連れ込んだ。ここら辺はもう記憶が曖昧だが。
感想を言わせてもらえるならばそれはもう一言、
…気持ちよかった………
話をたくさん聞いてもらえたし、ノンケの俺を優しく抱いてくれたようだし、顔も良いしで文句なしかよ。俺はホテルから出ていく際に眠る男前を置いて出ていくのはどうかと思い、メモに名前と連絡先とお礼を書いたが連絡先とか重くないか…?と思い直し、五回くらい書き直した末に「昨日はありがとうございました。お話を聞いてくれて嬉しかったです。」というメモを枕元に置いてホテルをでた。会計を済ませようと思ったが、男が済ませていたらしくすでに支払われていた。…申し訳ない。
できることならば、もう一度だけでもいいから、抱いてもらいたかった。
つい昨日までノンケだった自分はどこへやら。邪な気持ちばかり頭に浮かび、枕を抱えてひとりで「ぐわああああ」と悶える。しょうがないじゃん。性欲だらけの大学生なんだもん。

ピンポーン・・・インターホンが鳴り、今日は友達が訪問する予定なんかないし親も然り。誰だろうなあ、と思いつつ痛む腰を抱えつつ玄関に向かい外を覗く。
「…はっ?」
そこにいたのは、俺がついさっきまで想いを寄せたあの男前だった。
なぜここに…俺がおそるおそる扉を開けると、男前はお前にもう逃げ道はない、とでも言うかのように笑みを浮かべ中に押し入る。
「なんでここが…」
「君、個人情報はホテルのごみ箱なんかに捨てちゃダメだよ」
彼の手には、俺がぐしゃぐしゃに包め、ごみ箱に捨てたはずの連絡先が描かれたメモ。ごみ箱なんざ普通漁るかぁ…???いや俺が不用心なだけなんだけどさぁ…
「なんで帰ったの?」
そう聞かれ、俺は返答に困ってしまう。なんで帰った…?え、一夜限りの関係ってそんなもんじゃないの?
俺が戸惑っているのがわかったのか、彼はそのキレイな顔を寄せた。

「昨日言ったこと、覚えていない?」
…すみません、覚えていないです。
「…覚えていないんだね」
イケメンが悲しそうな顔をすると、なんだかこちらが悪いことをしてしまったような気持ちになる。
彼は俺の手を引いて、寝室までずかずかと歩いていく。待て、なんで部屋の間取りがわかるんだ。
俺は押し倒されるがまま、抵抗なんてものの一つもできずに彼のキレイな顔を見つめる。あれ、なんで俺押し倒されているんだっけ…?
「じゃあ、君の身体に聞いてみよう」
色気たっぷりにそう言われ、自分の耳が熱くなっていることに気が付いた。枕の冷たさが気持ちいい。

「好きだ」耳元で何億回もその良い声で囁かれ、一日中ベッドに沈められたのは言うまでもないだろう。


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