■報告書ファイル1

最近、俺は気になっていることがある。

職場の女の子達に「好きなタイプは黒髪の地味で真面目な子」て言ったりとか

さりげなく仕事を手伝ってくれたりとか

俺が残業する時は必ずアイツも残って帰りは送ってくれたりとか

クリスマスと誕生日は必ず、プレゼントをくれたりとか

この職場の飲み会の中、メールで「今から抜け出してこい」的なメールを送ってくることとか


最近、俺はめちゃくちゃアイツについて気になっている。




***

「佐藤さーーん、どうしたんスかー!!」
隣で既にできあがった後輩の手から酒を奪い水を持たせ苦笑いしながら答える。

「おーい、楠木?もうできあがってんじゃん、どした?早くね?」
顔を真っ赤にした後輩、楠木は俺のその返答に対してお気に召さなかったようで
「そんなことどーでもいいんすよ!!先輩さっきから携帯見てどうしたんすかぁー!!」
「あ、あぁ。ちょっと仕事でさ」
「かーっ!!先輩、飲み会でまで仕事仕事で、……っもーーーー!!!先輩彼女とかじゃないんすかぁ!!」
「ハイハイ、そういえば楠木は彼女いたよね」
「その話は今なしっす!!昨日フラれたばっかなんすよおぉぉ〜〜」

そこで机に突っ伏した後輩を同僚に一言頼んで、俺は飲み会から脱出する。

別にウチの会社はブラックでもないし、飲みを強要する訳でもないから、飲み会がツラいということではないが肩と首をまわしつつ、アイツが出て行ったであろう場所に向かう。

居酒屋を出て、エレベーターの方を曲がり非常階段の扉を開けた瞬間、手を掴まれた。

「ーーーやっときた、」

俺と9cmも差があるコイツを見上げると山田は嬉しそうに口角を上げる。

「……飲み会中なのに、いいのかよ」

「えぇ〜?女の子達めんどくさいし」

あぁ、そういえばコイツモテるんだもんな。
仕事はできるし愛想はいいし。それにイケメンで高身長。女の子はこぞってコイツに猛アピールする。

「ふぅ〜ん?余裕綽々だなぁ?俺達もうアラサーだってのに」

「そりゃあね。」

山田はそう言って俺の手を離そうとしないので、離せというアピールをする。

「俺は佐藤に彼女出来ちゃうんじゃないかって心配なのになあ」

「はあ?俺はできなくて焦ってるのに?」

「はぁぁ…佐藤、昼飯いつも弁当で家庭的だしなあ……」

「いや、経済的な理由だから」

「女子力…」

「いらねえわ!!」

「面倒見もいいしなあ…」

「え、なにお前俺のこと好きなの?」

そう照れ隠し紛れに茶化しながら言うと、ヤツは俺を一瞬強く抱きしめ、室内に入っていく。

「自分で言ってて恥ずかしくないの?そんな訳ないじゃん」

こちらを一瞬見、去っていく山田。

「は、はああぁぁぁぁ!?!?!?!!」

俺が叫ばない訳がないだろう。

俺は最近、山田が気になる。


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