第四章

「いやいやいやいやそれは望んでない嬉しくないほんといいから」
「遠慮すんなよ」
パニック状態に陥った自分をなんとか客観的に見ようとさらに頭がおかしくありそうだ。



昼間だって珍しく会話する時間が長かったというのに、またトーカに夜も呼び出しをくらった。

「いやだやだやだもう行きたくない」
「いやぁ…まあ行きたくねえよなあ…」

セイの前でごねにごねて、食堂でもごねて、演習中にもごねる。それだというのに、時間は無情にも過ぎていき、日が沈んでしまった。ほんと…行きたくない。なにを離すことがあるというんだ。なにもないのに呼び出されるという事実がもう恐ろしい。

「やだやだやだやだほんとうにいやだ」
「気持ちはわかるが、行くしかないだろ」

頭を大きな掌で撫でられる―というより、かき混ぜるに違いが―と、安心してしまう自分がいるのは否めない。しかし、この胃に反吐が溜まっているような感覚は拭えない訳で。

「はあ…行くしかねえのか…」



「二度と他の男に触らせるんじゃねえ」

そう言って、執務室からさっさと出ていったトーカの背中を見送り、解放された身体を起こして、口づけられた額を触る。

「…は?」

入ってきたデータが大きすぎて、読み込むのに時間がかかる。今なにが起こったのか、今何を言われたのかさっぱりわからない。


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