「…は?」
俺が再度気の抜けた声で聞き返す。俺の頭がポンコツなわけでは決してないが容量がでかすぎて処理が追い付かない。何も言えない俺に構わず会長の喋る勢いは止まらない。
「お前を調べさせてもなにも出てこねえし、自警団の方に探りを入れさせてもお前を知る奴は誰もいねえ!お前は何者だ!?」
「そ、れは…そうだろう、俺は自警団じゃ極秘の存在だ。お前に顔を見られたのは俺の過失でもある。なんなら、記憶でも消すか?」
冗談混じりに、拳を見せると会長は悔しそうに口元を固く結んだ。
「あの日、俺がお前と試合をしてから、何をやるにも手が付かねえ…俺は、お前のことばかり考えている」
オマエノコトバカリカンガエテイル…
「生徒会でも家の手伝いをしている間もお前のことが頭から離れねぇ…!クソッ…!」
…コイツは自分が言っていることを理解しているのだろうか、俺の聞き間違いじゃねえよな?
「八ッ…わかったぞ!俺はお前のことが憎くて憎くて仕方がねえんだな!?」
…もう、それでいいや…

俺は深いため息を一つ落としてから、頭を切り替える。
「それで?会長サマはなんでこんなところに?」
シキは品が損なわれない程度にソファへと身体を預けると、会長はシキの隣に腰掛けシキの方の背もたれに手を回した。そのせいで、シキと会長の距離は必然と近くなる。
「会長サマなんて、この場に似つかわしくないだろう。俺のことはタクトと呼べ」
必要以上に、距離の近いコイツにイラッとくるがそれよりも俺の質問に答えないコイツに腹が立つ。
「じゃあ、たっくんだな」
俺がそう言うとたっくんは虚を突かれたような顔をして一瞬のフリーズ後、「…ッく、ククッ…っク」なんて笑い始める。おいおい、笑いこらえきれてねえぞ。俺がじとりと目の前の男前を睨んでいると、ようやく笑いが収まり始めたのか少し真面目な顔をする。
「はあ…俺は父さんの代わりに来ただけだ」
そう言ったタクトに疑いの目を向ける。俺はそんなことを来たわけではないのだ。
「だから、それがおかしいから聞いているんだ。こんな大きなパーティー、しかもいわば「お前を殺す」と言っているのと同義の招待状をなんで受け取った?」
俺がソファに手を置いてずい、とタクトと距離を詰める。
「招待状の主は俺ではなく、俺の父さんに宛てたわけだ。」
「だから、お前は殺されないとでも?」
「それはどうだろうな」
不遜に口角を上げ俺の目を覗き込むように目を救い上げるタクトの目の色は深い青だった。
「…お前はわかっているだろう、このパーティーの本当の目的を。…俺から言えることは、自分の身は自分で守れ、以上だ」

シキはソファから立ち上がると、軽くヒール響かせて颯爽とタクトの前から去っていく。

タクトは整えられた前髪をぐしゃり、と崩すと顔を赤くして熱い息を吐いた。
「…いい匂いした…」

***

「随分と遅かったじゃないか」
柔和な笑みを浮かべながらも責めるような眼差しで見つめてくる男に申し訳なさそうに微笑み返す。
「えぇ、少し…素敵な殿方とお話ししておりましたの」
シキがそう答えると、猫のような目を細めて男は答える。
「へえ…それは随分…妬けるな」
「ふふ、ご冗談を」

仲睦まじそうに談笑する二人の姿はどこか緊張感があふれている。そんな中一発の銃声が鳴り響いた。







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