ーーーそこは、とても開けた場所だった。
ここまで来るのに、敵もナシ。障害物もナシ。まるでこの先にいる奴が、俺に早く来いと言っているようだった。
後ろにある重みと暖かさが、この子を生かせと痛々しい程に訴えてくる。
………あぁ、わかっているさ。

「………よく、来たな」

そこにはーーー、

「……、貴方は………」

全身を包帯で巻き、肌は口周りのみ見えるがその唇もその周りの肌も黒く、爛れているようだった。奴は車椅子に乗り身動きが取れないように思う。

「私は、そうだな。フォレストと名乗ろうか。悪いが私は目が悪くてね、君の名前を聞いてもいいかね?」

「………第七師団三番隊隊長シキと言います。貴方はこの宗教集団『xxx』の創設者とお見受けする。」

「創設者は私ではない。この集団は、いや、考え方や信仰は昔から根強くあったのだよ。それを集団化させただけなのだよ、つまり創設したのではなく、私は皆の声に耳を傾けただけさ。」

「考え方………?」
「そう、この世界は間違っている。
ーー人間は、醜い。
……他者と争い、他者を憎み、他者から奪う。
創造してはならない物を創造したのは他でもない、神だ!神は私達を創造した責任があるというのにその責任を払わずのうのうと今も何処かで生きている。
………私達はそれが許せないのだよ。」

「……だからと言って、貴方が奪うというのはお門違いだ。」

「いいや?私が、その無能な神に変わって神になるのだよ。責任を持った、神に、ね。」

「そんなことが、できる訳がない。できたとしても、貴方がなるのは、堕ちたナニか、だ。」

「いいや?その堕ちたモノになるのは私ではない。その前段階は済んでいるのだよ。」


「………前段階?」

「ホラ、君の後ろにいるじゃないか。私の可愛い、実験台が。」




俺が後ろを振り向くと、そこにいたのは、
「………アオ、……」

***

そこにいたのは、顔を伏せ表情の見えないアオだった。

「久しぶりだね?x(サイ)?いい名前をつけてもらったじゃないか?私のコドモよ。」
「…………もう、俺はxじゃねえ。俺はアオだ。」
アオは顔を上げまっすぐとフォレストを見つめた。その表情からは彼の心情を伺うことはできない。
「そうだね、今のxはそこの彼の近くにいる私のコドモだ。」

そうフォレストが言うと、彼は俺の背中にしがみつくように力を込めた。

「…………お前は、お前は子供になにをしたんだ!アオに、この子に…っ、何を背負わせたんだ!!」

「何も背負わせてなどいないよ。彼らには神のツケを払ってもらったまでだよ。責任を取ってもらった。それだけだ。」

「コイツらは、普通の人間だ!!神のツケだ?そんなん糞食らえ!!!子供にっ、子供にそんな大人の責任を押し付けるんじゃねえ!!!」

………ダメだ、ダメだ落ち着け。腹のなかで自分のどす黒いものが渦を巻いているのがよくわかる。

「普通………?彼らは普通の人間ではない。生まれ持っ
て神の力を持った子達だ。」

「………神の、力?」

「神の力を持ち、両親に捨てられ、その力で汚れた社会を浄化する。合理的だろう?コイツらはな、生まれてすぐに自分の両親に化け物と呼ばれ、その忌々しい力を持ち人を殺す道具と化した奴らなんだよ。」

俺は後ろの彼の手とアオの手をぎゅっと握った。

「………っ、勝手に、勝手にお前がそうさせただけだろうが、コイツらは俺に助けを求めたんだ。助けを求めることができるなら、コイツらは普通の人間だ。」


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