小話1

ノアのすごいな、って思う所は、こんなぽっと出の転入生にめんどくさい話ふっかけられても、話しかけてよかったと言える所だろう。
俺も話し掛けてもらって良かったと思う。

「なんで、ノアは俺に話し掛けてくれたの?」

少し野暮な質問かな、とも思ったが気になっていたので聞いてみる。

「外見と中身にギャップがありそうだったから!」

それは褒めてるのか…?

隣にいたシノが堪らず吹き出した。
「それっ、褒めてんの?っ」
「褒めてるよ!」
「褒めてるんだ…」

………シノが肩を震わせていたので、俺はシノの頭をチョップした。

小話2

「シキって大体本読んでるよね、何読んでんの?」

休み時間、教室の自席で本を読んでいるとクラスメイトに話し掛けられた。

「………えーーっと、」

「あ、あ?俺、アラン!」

「アランね、分かった。」

「俺、機器類得意だから、パソコンとか携帯とか壊れたら、任せろ」

「すげえな、俺そういうの苦手だわ」

アランは、ニシシと笑うと話を続ける。

「シキは、不器用そうだもんな」

「めっちゃ当たってるじゃん…」

俺達はしばらく見つめ合って馬鹿笑いする。

「お前今度、戦闘の授業の時覚えてろよ?」

「……ゴメンナサイ」

こうしてシキはクラスメイトとの仲を着々と深めていくのであった。

小話3

「シキいいぃぃ、勉強教えてくれぇぇ」

俺達一年の前に新歓が迫っていたが、迫っているのはそれだけではない。中間テストである。

前の席であるシノは俺の机に伏せりながら、呪いの言葉を吐く。

「俺は、俺は、文系が無理なんだああぁぁぁぁぁあああ」

最近コイツの序盤の爽やかキャラを何処に……?といった具合の負のオーラに、周りはたじたじである。

クラスメイト曰く、「シキと話している所見て、シノって意外と話しやすいんだな」って思ったらしい。

そのため、最近シノが寂しそうにしている所は見受けられないが。

キャラ崩壊しすぎてはないだろうか?

「いや、お前入試一位だったんだろ?」

「入試は死ぬ気でやったから」

……さいですか。

「シーキ!」

後ろから抱きつかれる。

「僕も科学わかんなあ〜い」

「…ノア、後ろから抱きつくのはやめてやれ」

「かたいこといわないでよ、クロエ」

「そもそも、Sクラスなんだから、皆成績良いんじゃないの?」

「苦手なモンは苦手なんですー!」

突如ガバッと起き上がるシノの頭に手を伸ばし、撫でる。どうどう。

「ハッ!シキに頭撫でてもらった…!」

と、そのまま机と再び顔をめりこませた。

「…シノ、疲れてるんだね」

勉強のしすぎ?キャラぶれ注意…。

「シノは、前まで無駄にキラキラさせてたけど、今そうでもないよね」

「……」

無駄に、キラキラって……。ノア、結構人の痛い所迷わず抉るよな。

「クロエも、前まで僕以外とつるまないから、周りから一匹狼なんて呼ばれてたし」

えっ、ダサいな…。

「あっ、今シキ、ダサいと思ったでしょ!」

「ノア、今わざと俺は口に出さなかったのに。」

クロエがちょっと目を潤ませる。

「クロたん???泣かないでくだちゃい????」

「シキのそれ、ほぼ煽ってるよな、なんか見てる俺までイラッとくる。」

「んだよ、シノ。復活しやがって。」

………登場人物達のキャラぶれが止まらない。

***

俺の家は、王族の分家で、あまり格式が高い訳でもないしこの学園で言えばどちらかと言うと貧乏な方だ。

それなのに、俺の両親はその名ばかりの王族という肩書きに拘り、俺をなんとかして国の中枢に食い込ませようと、俺をこの学園に入れた。大金払ってね。

中学まで俺は散々周りの連中から馬鹿にされた。
王族かぶれ、俺のあだ名、これ。

はあ?俺は湿疹か何かですかっつーの。



教師は俺を腫れ物のように扱うし、同級生は俺の肩書きに媚びるか、馬鹿にするかの二択だった。

そして、俺は自分を守る為に性格も明るくしたし、とっつきやすいようにした。
すると幾分マシになったが、誹謗中傷する奴はそりゃ無くなりはしなかった。

中三の春、俺の家に脅迫文が届いた。

要求は特に無く、殺すとか、そんな感じ。
俺達は王族とは名ばかりだったから、大々的に国は動いてくれないし、ウチは民間に護衛を委託したが、護衛がついたのは両親のみである。毒親か。

両親はその脅迫文に怯えるどころか、やっとこの一族が認められたとかなんとか言ってたが、脅迫しやすかっただけだろう、阿保だな。

そして夏に、国から俺に護衛が派遣された。その頃はしっかりと猫が板についていたのでしばらくはクロエにも素を出さなかったが。

そして高校に上がる時、俺は身分を隠した。勿論理事長は知ってるが。

その脅迫文は今もまだ続いている。


そして、五月。クラスの爽やか君の隣に突如として現れた、眼鏡君に俺の直感が働いた。

絶対コイツ面白い。


眼鏡を見た瞬間、クロエが反応していたため、それもまた面白い。



そして、シキは俺と真剣に向き合ってくれる。なかなか、俺の周りには居なかったタイプである。俺の事を唯一理解してくれる人、なんて言わないけど。少し俺は寂しかったのかもしれない。

俺のことを真っ直ぐに見つめるその黒い瞳に、俺はーー、


コイツ、やっぱり面白い。

いつか素で話したいけど、急なキャラ変は恥ずかし過ぎるから、徐々に素をだしていけば、いけるかな、と思ってるところだ。


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