自分の参加する種目が終わり、再び警備に戻る。

残りの時間は、グラウンド警備のみ。

なんとなく校舎に視線を向けてみた。
すると、屋上に人影。黒い服装をしており顔は見えない。不審者か……?と思い、無線に連絡しようとした。
しかし、その行動は一瞬憚られた。
その不審者が人差し指で下の階を指している。
…………俺に、何かを伝えようとしている?

直感だが、敵ではない気がして素直に校舎の最上階の窓を見ると…………

「……!?」
ガタイのいい男数人と小柄な生徒数人が、空き教室に入っていくのが見える。
様子からしていて、何か揉めているのがわかった。
あの南校舎はグラウンドから見えづらい構造になっていルために気づきづらい。

自然と走り出す自分の足と冷たい水が流れ込んでくるような頭ン中。

「会長!!…南校舎5F端の空き教室!」
『はっ!?あ、おい!!!』

敬語を忘れた気がするけど、今はそんな場合じゃない。

「………っ、間に合ってくれよ……!!」
俺はこの時すっかり不審者のことを忘れていた。

***

『会長!!…南校舎5F端の空き教室!』
普段は冷静で敬語がデフォルトな副からの切羽詰まった無線。

「はっ!?あ、おい!!」
クソ、アイツ言うだけ言って切りやがった!

「あンの、アホッ……!一人で行きやがって…!」

どうする、自分は本部からは動けない。自分が動きたい衝動を抑え込み、今の配置で誰が一番近いか考える。その時ーー

「会長、何かありましたか?」
「お前は…」

風紀副委員長、山蛇 弥がまるで全て知っているのかのような顔をして言ってくる。

「俺なら貴方の役に立てますよ」

***

突然大きめの生徒と小柄な生徒に囲まれた。
僕は別にどこの親衛隊にも入っていないし、抜け駆けをした覚えもないのでなんでこんな状況になっているのか全くわからない。

「お、まえら、!!何が目的なんだよ!!!」
ただで数人に囲まれて不利なのに、ガタイのいいやつばかりでなんなんだよ!当てつけかよ!!

「うるせえな、おい押さえつけとけ」
「やめろって!!」

………この教室は確かあまり使わないし、端の教室だったから、誰かがたまたま通りかかることもそうそうない。

どうしよう……

流石に恐怖を覚えた。今から俺は理不尽に殴られてしまうのか。
俺が弱気になった瞬間、扉がガタガタッと震えた。風ではありえないくらいの揺れ具合だ。

「なんだ?」
「おい、誰か見てこいよ」
「お?……おぉ」

一人の男が扉に手をかけた瞬間ーー、
扉が勢いよく内側に外れて外からナニかが入ってくる。扉に巻き込まれた男はそのまま気絶している。

するとそのナニかは、俺の両端を固めていた男二人の頭を両手で鷲掴んで地面に叩きつけ、俺を見下ろした。ジャンプ台代わりにされた男はそのまま前につんのめったところを回し蹴りされる。

早すぎて見えなかったナニかの正体を見た瞬間俺は息を呑んだ。

「……っ!?ふ、副会長…!?」
「怪我はない?」
「は、はい……」
「アレ、小柄な子達もいたと思うんだけど?」
それは気づかなかった。そういえば教室に連れ込まれたあたりからいなかった気がする。小柄な奴らは見当たらない。

いつもと少し雰囲気の違う副会長は俺の怪我を確認しようとしている。って、ちょっと!!

「副会長、後ろ………!!」

危ない………!!
と思ったのも束の間、後ろから黒い上着にパーカーで顔を隠した男が、襲ってきた男を倒していた。

「…………お前は誰だ」
副会長は静かに、その男に質問をする。が、その男はなにも答えず小柄な男数人を副会長に突き出す。

無言のまま、去ろうとするその背中に副会長は、
「…………ありがとう」

それを聞いた男はその場から静かに去って行った。

***

「あれっ、これもう終わった後?」
不審者、もといパーカーの男が去った後、すぐに山蛇が教室に駆け込んできた。教室の惨状を見た山蛇がそう言った。

「……………とりあえず、未遂。山蛇は会長に連絡。俺はこの子を風紀室に連れていく。」
「えー、俺会長にカッコつけて来たのにー」とぶつくさ文句を言っている山蛇に指示をだして、被害者の手を引いた。

…………あの男は誰なんだ。

パーカーを深くかぶったあの男のことが気になった。

「ふ、副会長……!!」
後ろからついてくる彼が切羽詰まった声で呼ぶので、驚く。
「どした?」
「あの、大丈夫なので、て、手を離してもらっても………?」

…………気がつけば、手を握ったままだったようだ。

「あ、ごめん」
「い、いえ……」

「本当にごめん…………」

あの男が、俺に教えていなかったら。
あの男が、主犯と思われる小柄な生徒達を捕まえていなかったら。
あの男が、俺を助けなかったら。

………………クソ、…ッ

その後俺達は風紀室に向かい、そこで月乃や花沢に泣きながら怒られ、駆けつけた秀にはお叱りを受け、原先輩に癒してもらった。



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