「…………だから、早く言えって前から言ってんだろ…?」
とりあえず、全てのあらましを話したら秀は項垂れていた。
「………ハイ」
「なんだよ、俺に怒られるとか思ったんか」
「いや…本当に今回の場合は、ハイ、いえあの、こんなことになると思ってなかったというか、……ちょっと忘れてたというか、」
普段気を使ってもらっている分、申し訳ない…。
「………俺は、いや俺達はお前が何かあった時にお前が逃げて来られるようにいつでも用意してんだよ。…………つまり、お前の中ではまだ俺達は逃げ場になってないんだな。」
「…っそんなことは!」
「いや、でも実際そうなんだろう。」
「待て待て待て!そんなことないって!!そもそも、友人のお前にこんな対等じゃないことやってもらってるんだからっ」
「お前は気づいていないんだろうけど」
「……………?」
「お前の親衛隊は、確かにお前を恋愛対象として好き、憧れるという奴達だ。」
「改めて言われると…ウン」
「だが、親衛隊のほとんどはお前の強さに惹かれる」
「……………………」
「俺達は、お前が今までやってきたことを、忘れたとは言わせねえ」
「……それ、俺が悪役みたいじゃん、」
「俺にとってはそんな感じだわ!忘れてた、なんて言いやがってよ」
「それは……ゴメンナサイ」
本当にゴメンナサイ………
「……………それで、今からちょっと行かなきゃいけなくて」

そう言った瞬間、秀がさらに鬼に見えたのはここだけの話である。

***

俺は今、チームvillainの溜まり場でもある「ally」の前に来ている。allyとは、ユキさんの叔父さんが営むバーである。
allyの前で入るか入らないか迷いウロウロしていると、扉が自ら開く。
「…………ヒロ、早く入んなよ」
扉が一人でに開く訳がなく、カオルさんが中から顔を出した。
「……はい」

店内に入った瞬間に、賑やかだった雰囲気が一気に静まり返り全員の意識が店の入り口、つまり俺に集まっている。そのことに気づいて、(これは……)この先の展開が安易に予測できて、一人固唾を呑む。

あぁ、懐かしい。

懐かしい顔ぶれに己の緊張が和らいだ瞬間、
一本のフォークが俺の顔面目掛けて飛んでくる。

「ッッだーー!!!ヒロ、テメェェ!!!!」
「うおおおお、ホンモノかよぉぉぉ」
「お前フザケンナ!!!!」
「俺がどんだけ探したとおもってんだよぉぉ!!!」
「王子様キャラとか似合わねーぞー」
「アハハハハッッ!!ヒロがおかえりだー!!!」

俺には罵詈雑言にしか聞こえない怒声達と共に飛んでくる、皿やらフォークやらスプーンやら箸やらコップやらを避けつつ店の奥に入っていく。

あぁ、懐かしいなあ

いつもこうやってみんなで海賊のようにどんちゃん騒ぎして、それで、

「ってめぇらあ!!まぁた、店のモンゴミカスにしやがって!!!テメェらで片付けろよ!!!!」

この店の鬼、否店主にフライパンで殴られるんだよなあ。




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