act.00

入間家とは良き関係を築いてきたと思う。落ちぶれていたこの龍河組を俺が当主になってからは立て直しを図り、今ではどこに行っても恥ずかしくはない程に大きくなった。その時俺は成人したばかりで、まだ青かったけれど。
そんな中、入間家とは裏で暗躍を主に担当している家柄で、当主入間俊輔(イルマシュンスケ)はかなり仕事の出来る人間だった。親父がまだ現役だった時から数えれば四、五年の付き合いではあるが、お互い信頼を寄せていた。

ある日、入間夫妻が連れてきた幼子が俺の運命を変える。

入間俊平、齢五歳。
母親似の顔立ちは、五歳にして将来が楽しみなほどに。そして何より、彼を一目見た時に普段ピクリとも動かない俺のSubとしての血が騒ぎ出す。

これは、運命だ。捕まえろ、離すな、逃がすな

そう騒ぎ立てる。待て、落ち着け。彼はまだこんなに小さい。時が熟し、迎え入れる準備が出来た時に会いにくればいい。

何故ならこれは、運命だから。俺は待つことは得意なんだ。


入間夫妻は、自分たちになにかあったらよろしく頼むと言って彼を龍河組本家に置いて仕事に向かった。どうやら、相当骨の折れる相手らしく、彼らの顔付きは死地に向かう武士のようだった。

そして、俊平は愛する両親を失った。

その後、このまま引き取っても良かったのだけれど、こんなヤクザよりは良いと、俊平は裏社会とは一切関係のない親戚へと引き取られていいた。良い子で待っているんだよ、俊平。


きっと、すぐに迎えに行くから。



その時は、二度と放すつもりはないけれど。


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