act.04


「あのっ、好きです!付き合ってください!」
大学生になってから初めての冬を迎えようとしている、高校時代もそうであったが、この時期はこういった類の呼び出しが一番多い。
大学に上がれば、こういった面倒事も減るかな、と思っていたのに、逆に増えるとはどういうことなんだ。大学生の貴重な休み時間がどんどん減っていく。まあ、冬はクリスマスに年越し、バレンタインとイベント目白押しだ。人肌恋しくなる季節でもあるし、みんな必死なのかもしれない。

「悪いけど、俺付き合ってる人がいるから」

冷たくあしらうように言えばここで大体の奴等は、目に涙を溜めて走っ去っていく。俺は反応せずうつむいている女の子を冷ややかに見遣り、さっさと昼食を取ろうと背を向けた。その瞬間、背に衝撃が走る。

「その付き合ってる人より、私の方が満足してもらえると思います!私はSubだし、Domの入間君と相性ピッタリでしょう!?」

そう言って、泣きつき離れない女のせいで、胃がキリキリしてきた。お願いだから離れてくれ…匂いでマーキングされているので、女にこうも密着されていると、帰った時にバレて怒られる。
「アンタのこと知らないし、アンタの匂い、好みじゃないんで」

いつの間にか、野次馬が出来てるしこれ以上騒ぎたくない。

「じゃあ、入間君の好みの匂いを教えて!…この匂い、すごくいい匂い…」

女が俊平の匂いを嗅いだ瞬間、一気にその場凍り付いた。それは決して彼女の行動が気持ち悪かったから、という訳でもなく、気温が下がったという訳でもない。

俊平が、Dom特有のGlareで威圧しているのである。この場の全てを支配した圧に野次馬までもが座り込んでしまっている。この大学は国内でもレベルの高い学校であり、優秀なDom性の人間も多くいる。
それにも関わらず、一瞬にして支配を譲らない俊平のGlareが強かったのか、はたまた彼の怒りが大きかったのか。

「今、匂い、嗅いだ?」

この場で一番彼の近くにいたSubの女は、すでにぺたりと座り込み、服従の態勢だ。威力の強いGlareは、Subを強制的にSubスペースにもっていき、彼女はすでに雌の顔をしている。それと同時に目の前のにっこりと笑いながら目の笑っていないDomの彼に恐れ慄いていた。

「この匂いは俺の恋人が、朝付けてくれものなんだ。勝手に嗅がないでほしいなあ」

そう言って、顔をズイ、と近づけた俊平の顔は綺麗だ。しかし、にっこりと笑っていても、怒りがビリビリと伝わってくる。先ほどとは意味の違う涙を流しながら、ごめんなさい、ごめんなさいと、女は喘いだ。

「ホラ、見て、ココ。俺のココ、ちゃあんと他人のモノっていう印がついてるでしょ?」

二度と近づくな、そう言ってこの場を支配していたGlareを引っ込めてさっさと食堂に向かった俊平の背中をその場にいた全員が見送った。

彼は、知らない。その優秀なDom性を持つ彼に服従したい、という人間が増えて増々昼休みが潰されていく、ということに。



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