背中から変な汗が吹きだしている。浴室から聞こえるシャワーの音に、血の気が引いていくのがわかる。そもそも、どうしてこんな状態になってしまったのか。俺が女装をして、街に出たのがわるいのか。過去を悔やんだところで、今の状態が好転するとは考えられない。

いつの間にか、連れ込まれていたのは、ホテルのとある一室。確実にラブのつく方のホテルであった。
俺がボケッとしていたのが、悪いのか。それとも、弟の口が上手いのか。どこからだしてきたのか、制服から私服に着替えた弟は大人びたように見え、キュン…としてしまったのは、隠しがたい事実である。
そもそも、高校生で出会ってわずかな女子をラブホに連れ込めるなんてどんな技術持ってんだよ!?お兄ちゃんは、そんな風に育てた覚えはありません!!
ってか、お兄ちゃんこんなところ来たの初めてなんですけど…!?

シャワーを浴びようにも、全裸で出ていったら男だって即バレ間違いなしだし、そもそも俺と弟がセッ…んんっ、ヤろうにも俺には挿入する場所がないのだ。

しかし、シャワーから出てきた弟に「久しぶり〜弟〜、お前がこれからセックスしようとしていた相手、お兄ちゃんなんだ〜ごめんな〜」なんて、できるわけがない。
アイツが風呂から出てくる前に、さっさとこの部屋からオサラバしてしまうのが、吉ではないか。
朝陽には申し訳ないが、俺はまだ男としての矜持をまだ失いたくないし、この趣味は特に弟にはバレたくない。それに、俺はここに来るまで喋れないようにふるまっていた。まあ、それは朝陽が最初に、声がでない、と勘違いしたのだが。

今日一日、朝陽とふたりで特に問題なくデートをした。俺は、朝陽に素っ気なく振舞われることないのが嬉しかった。そのために舞い上がっていたのかもしれない。俺と朝陽はメモで会話していたのだが、それでも十分楽しかった。

腰掛けていたベッドから、立ち上がり急いで部屋のドアへ向かう。よし、ここからの脱出だ。
ドアノブに手を伸ばした瞬間、後ろの方で浴室の扉が開いた音がした。

***

ベッドに押し倒され、南月は腕を思い切り突っぱねるもののあっさりと腕を抑え込まれてしまう。
やめろと声を上げようとして、はっと気づいた。
(…やべ、俺、声がでない設定で今日一日過ごしてたんだった…!)
「…っ、」
「なっちゃん、どうしたの…?怖い…?」
耳元で囁く声に、思わず反応してしまう。甘い声音に驚いて目をぎゅっと瞑ってしまった。頭の中では、ぐるぐると「どうしよう、どうしよう」としか考えられない。優秀なはずだった脳みそはヒートしてとっくのとうに使い物にならなくなっていた。
「…は、っ、ぅ、ぅ…は…」
右耳を、長い舌で舐めまわされ、横へと顔を逃がそうとすると、朝陽の左手で顔を抑えられてしまい、逃げることができない。脳内を直接犯されているようで、思考が停止する。
南月の目は、熱に浮かされ焦点を合わせることができない。
「耳、弱いの?はは、かわいいな…」
左耳の後ろを中指でなぞられ、南月は腰を揺らしてしまう。今までに見たことのない弟の表情と、色気にあてられてしまい、すでに南月は酩酊状態にあった。

「ひっ…!?」
朝陽に思い切り緩く勃起していた自身を握られ、腰が逃げる。てか、は?え?バレ…
「あは、興奮してるの?かわいいなあ」
スカートを捲られると、男モノのパンツが露出する。先走りが滲んだ布は色が濃くなっているのがわかった。朝陽は濡れた布の上から、南月のペニスをなぞっていく。もどかしい触り方に腰が自然と浮き、その動きはまるで「もっと触って」と言っているようだ。
「ゃ、は…ん、はぁ…」
漏れだして溢れてしまいそうなる声を必死に押し殺しているせいか、余計に酸欠を起こしている。そのためだろうか、耳まで顔が赤くなっている。いや、そのためだけではないだろう。
「なっちゃんのクリトリス、触ってほしそうにしてるね
…触ってほしい?」
は、は、と浅い息を繰り返す。触ってほしくて、溜まらずコクコクと頷いた。朝陽は反り立った熱い南月のペニスを中指でなぞるだけを繰り返す。敏感なソコは、そのちょっとした刺激だけでもたまらないとでも言うように、ビクビクと反応していた。
「ホラ、言わないとわかんないよ」
耳元で、囁かれる。

もうダメだった。朝陽の手と声によって引き出された快楽への誘惑にバカになった南月の脳みそは、堕ちていく。
スカートを持ち上げる、己のペニスを包むパンツを自ら降ろす。すると、勃起し震えるペニスが鈴口をひくひくさせているのがよくわかる。

「さ、さわって…ん、はあ…ほ、しい」

明確な言葉と南月の自ら堕ちてくるという意思に、思わず朝陽は昼間見せていた優し気な表情を捨て、獣が餌を仕留めるような顔を表した。
朝陽は、己の兄ににっこりと微笑みかける。

「ハイ、ご褒美だよ。…南月」
「ッ!?…んあああ!ッ…ア、あぁっ!」

敏感な尿道口を爪でひっかくように抉られ、その勢いで南月は達した。勢いなく、ごぽごぽとでてくる精液を、手で掬い既に絶頂を続ける竿をしごく。その行為は行き過ぎた快楽を南月に与えるだけで、南月の焦点は合うことなく、虚空を見つめ酸素を求めるように喘いでいる。

「は、んあ、も、やめッ…あン…」
「南月、剥けてるね。自分で剥いたの?…俺がシたかったなあ…残念。
…でも、これからはいくらでも俺が、気持ち良くしてあげるからね?」
「ん、は、は、あぁっ、や、やめ…」

絶頂から落ちてくることができず、あまりの快楽に意識を失った南月を見て、朝陽は実に幸せそうに笑った。朝陽はスマートフォンを取り出して、南月の顔とその恥部がすべて映る角度で写真を撮ると、南月の額に口づけを落とす。

「好きだよ、兄貴」



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