二年前くらいの話

この世界に来て、今日で丁度一年くらいだろうか。
最初の三ヶ月、第一師団団長マトーさんに面倒を見てもらっていた。トーカは「ガキのお守りなんかしてらんねえ」とか言ってマトーさんに俺を押し付けていた。あの人、忙しいはずなんだけどな。
マトーさんは普段穏やかで優しい人だが、戦闘訓練だけはめちゃくちゃ厳しい。しかも的確な指示とスパルタさに俺はズタボロだった。だってよ、12歳の子供に拳銃の弾避けろ、ってさぁ……どこの○姉ちゃんよ、俺の頭は尖ってねえよ。
だけど、ある日突然マトーさんにおもっくそ叱られてる途中で魔王が俺を連れ去った。あの時のマトーさんの顔般若だったなあ………。
まあ、その犯人、言わずもがなトーカのことなんだけど。

この世界、五つの国で成り立っている。

東は、東倭国
西は、エスター
北は、ノースタシア
南は、オール国

その中央に位置するのが、神が住まう国シビュラである。

この頃、西のエスターと戦争直後。
エスター戦は、シビュラの勝利で終わり、互いに不干渉を貫くことを誓い終戦。
シビュラの頂点がオウシュウ家になって10年程だと言うが、この10年でこの世界を平和にすべく動き、やっとエスターと和平を結ぶことができたようだった。
これで、しばらくはこの世界に大きな戦争は訪れないと誰もが喜んだ。あとは、シビュラの古くから残る軋轢を片付けるべく、オウシュウ家が動きだしていた。

そんな最中、トーカは俺を連れて各国を周った。

地方も周り、内戦中の所なんて関係なしに周ったし、絶対こんな所人なんて通らないだろってところも進んだ。
トーカは俺を助けたりなんて絶対しなかったし、俺もここまで来たら意地だった。

途中めちゃくちゃデカイ蚊に襲われたり、
オーロラを眺めたり、
とある国の内戦に参加(不可抗力)したり、
色んな国の人と喋ったり、

沢山のことをしたと思う。



さて、俺が今いるのは、東倭国である。
この国は、アジア文化をベースにしたような、中国のような、日本のような国だった。
なかなか面白かったし、懐かしくもあった。久しぶりにラーメン(風)を食べ、俺は大満足だった。
桜なんて見れないかなとも思ったが、あるにはあるみたいだけど時期じゃないみたいだ。それもそうだ。東倭国にも四季があって、今は冬。めちゃくちゃ雪が積もっていやがる。

二人で宿屋に入り、一部屋借りる。
部屋に入り、軽くシャワーを浴びる。

居間に戻ると、トーカはソファに座り晩酌をしていた。

「おら、おめぇも飲め。」
「はいはい」

トーカの隣に座り、コップに酒を注ぐ。

「明日、帰るぞ」
「へ?」
「明日シビュラに帰る」

この、七ヶ月とちょっと。
世界一周?早かったなあ…

酒を煽ると、少しばかりクラッとくる。
む、普段はそんなことないのに。

「…これ、なんておさけ」
「あー、東倭国伝統の酒だとよ。かなり度数高えみたいだな。」
「……ふぅん」

眠い眠い眠い。瞼が重い。あー、重いなあ、

「眠いなら、寝ちまいな」
「ん」

そのまま、トーカの手によって横に頭が倒れる。

「ひざ、かたい」
「文句言うな」

俺の頭を撫でる、優しげな手に若干の鳥肌が立ちながらも俺はそのまま眠りの世界に落ちていく。
俺の手から、するりと絡め取れたコップ。

コイツの手、こんなにあったかかったんだなあ。

戦争真っ只中の国に降り立って、右も左もわからずただただ殺されるのを待つしかなかった俺を、助けてくれたヒーロー。実際は、ヒーローなんてキラキラしてるものには見えなかった。どちらかというと、鬼神。鬼。悪魔。

その、鋭すぎる生命力を宿した眼光に、俺は酷く目を奪われてしまった。
俺には、そんな目はできない、と。

普段は、赤子同然の俺を故意に崖から落とすような悪魔なのに。

その手の温もりに、

あぁ、やっぱりコイツ生きてたんだなあって



「寝ちまいな」
「ガキ扱いすんな」
「ハッ、甘やかされてる奴がよく言う」
「貰えるもんはもらっとかねえとな」
「じゃあ、俺にお前を寄越せ」
「生憎、俺は非売品なんで」
「お前なんざ、買う価値はねえよ」
「えぇ〜、もらってくれねえの?」
「お前はとっくに俺のもんだろう」
「今も、これからも、お前は俺のもんだ」

「返品不可でーす、」







まあ、帰ってから急にやれ三番隊隊長になれだの、やれあそこの麻薬密売組織を壊滅させてこいだの、やれあのテロリストぶっ殺してこいだの、やれ肩をもめだの、こき使われるなんてこの時の酔っ払った俺には考える余地なかったけど。


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ぷにゅっと太郎 様、リクエストありがとうございました!!ご依頼は、トーカ×シキ(ほのぼの)かアオ×シキ(甘々)とのことでしたので、今回はトーカ×シキ(ほのぼの………?)の方執筆させていただきました!
なんというか、二年前のお話ですのでまだシキの精神年齢も今より低め(一般的な13歳と比べると、高めかな?)となっておりますし、トーカがあまり魔王感を潜めてるのでほのぼの…した、かな?と言った感じですね笑 いやあ、難しかった!笑
アオ×シキの方はまた執筆しようかな、なんて思っておりますので気長にお待ちいただければ、と思います!

ちなみに、この作品のタイトル「冬花」ですが、一体誰のことでしょうねえ?(白々しい)

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