-About ConneQtion with 522 紅茶きのこさん(ブログ/pixiv) 蒼星さん(サイト/pixiv) 絵師であるお二方に 思うまま豪吹イラストを描いていただき 好きなタイトルをつけて ご提供いただきました。 既に完成されたふたつの作品から 空櫻が発想を得てそれぞれに 小説を書きました。 [絵⇔短編小説]という繋がった関係 [二点]あるいは[四点]の豪吹作品 お楽しみいただけると幸いです。 -Sample 君は魔法使い [Your spells strike my frozen heart] Illustration by Aohoshi あおぞらだ。雲はすこし遠くにひとつぽっかりと浮かぶだけで、天は鏡のように海の青さを真似している。浜辺まで近付くと一面に広がる海原に無心が飲まれ、潮に洗われていく。浅瀬の水底を踏み進めていって水面の泡が散っていく際から去ったとき、僕は半ズボンが濡れないよう意識を働かせた。南国の柔らかい風が喉元をすり抜けて、あまりの穏やかさに少し噎せそうになる。 静かに幸せが爪先からこみ上げて、あっという間に僕を満たしていった。海に分け入って火照った思考を冷まそうとしたって、胸のなかが熱いうちはたぶん無意味だ。夢のような現実から醒めることが出来ないように、改めて立ち返る場所はない。いまひとつ幸福すぎるという事実の扱い方がわからないままの僕は、ちょっと持て余して居る。 満たされていないから幸せでないなんてことはないのだ。些細だとしても良いなと思えることが一つでも有ればきっとそれは幸せだ。幸福の量とか質とか、そういうややこしいことはどうだって良い。けれど手にしている幸せを顧みずに幸せでないなんて言えるわけがない。 ただ僕は割とそうやって多くない幸せで食い繋ぐ習慣ならぬ癖があったから、両手いっぱいに注がれた歓喜について嬉しいというよりは溢してしまわないかと不安であった。けちなのだろうか。 -- 星降る [Tonight Weather : Shower of Stars] Illustration by Koucha Kinoko 喉は焼け爛れて、吐き出した息は夜長の東京を曇らせる。どこか羽目を外した群衆は秋雨の名残を喧噪で紛らわしていた。拍動が耳元で響いて、声を含めたからだの内はとにかく焼けた様に熱い。視界が浮付く理由をアルコールの作用だけに求めない程度の理性を片隅に残している思考だけが煮えて、煮詰まっていた。 自虐のようで事実なので言うけれど大人の男にしては貧相で頼りない僕は、それでいてそこそこお酒には強い。強いのだけど、今日は沈黙に急かされて杯が先走ってからだを置き去りにした。豪炎寺くんとの無言はいつまで経っても窮屈だった。 「……大丈夫か、随分飲んでいたな」 夜のなか不自然に白く浮かび上がる自販機はミネラルウォーターを落として、むやみに冷たいそれが彼の手を経由して僕の手に収まる。指先のか細い血管まで沸いていて、コントラストの強い感覚が不器用に栓を開ける。お酒とは違った、潤う感覚が喉を伝っていくと酔いは急速に遠退いて行った。醒めた途端に首元が寒くなって荷物になっていたコートを羽織ると、倣うように豪炎寺くんも開いていたパーカーのファスナーを中途半端に締めた。 -Detail 『ConneQtion』 20121111 A5 フルカラー口絵付/20頁・300円 全年齢向け 豪吹イラスト+短篇集 * Illustration(guest) Koucha Kinoko(Koi shitenda!) Aohoshi(stargazer) Novel and design Asakura Presents by 205mg |