「ふーん、なんか立派な制服だね。」


近所に住んでいる年下の男の子、星谷悠太君は立派に高校生していた。
他所の高校と比べると割化し派手なその制服は、綾薙学園という学校のものだ。

最近見かけないなと思っていたが、どうやら綾薙学園は寮のある高校で、今はその寮に住んでいるんだとか。

普通は似合ってるね、とか、かっこいいね、とかが妥当なのだろうけどスッと出た言葉はそれだった。




「早織さんは今からお仕事、ですよね。」

「うん。初年度だからもう大変で…悠太君、車乗ってく?」

「え、いいんですか?」

「通り道だからついで。ね。」


助手席をポンポンと叩いて座るように促すと遠慮がちにも悠太君は座った。



「…背、伸びたね。」

「そりゃあもう高校生ですから。」


私が座って彼を見ている状態では分からなかったが、こうやって並んで座ると自分の目線よりも上に彼の目線がある事に気が付く。

昔はこんなに小さかったのにねー、と頭をわしわし撫でてやると彼は照れ臭そうに「子供扱いやめてください」と言う。

そうだ、昔、よく遊んでいた頃は小さかったし、敬語なんてなかった。

時間の流れとは不思議なもので、時が経つにつれ、いつの間にか私たちの間に少しずつ壁が出来ていたかのように感じてしまう。

寂しいなあ、と声にするわけでもなく悠太君を眺めていると少し目を細める。

随分歳も離れている。彼が歳をとった分、私の歳も進むわけだから、大きくなり続ける彼といつまでも昔のままではいられない。


車内ではやんわりと彼の高校生活についての話をした。
どうやら高校生活は充実しているようで少し安心する。

私は今の彼に対して、どう接していいか分からないからついつい子供扱いしては、彼に怒られてしまっていた。



「この辺で大丈夫?」

「うん、ありがとう早織さん。」

「いえいえ、どういたしまして。」


寮生活である彼と次に顔を合わせられるのはもう随分先かもしれない。


「じゃあ、元気で。また今度ね。」


もう一度軽く頭を撫でようと再度今度は車から降りた彼に手を伸ばすと、その手は呆気なく手首を掴まれ阻止される。


「俺、もう子供じゃないよ。」

「あー、ごめんね。悠太く」「それに。」



「俺は早織さんと毎日会いたい。…出来ればメールとかも。」


若干頬を染める彼は私の目を見て真っ直ぐそう言い放った。

突然の事に思わず私は押し黙ると彼はにかっと笑ってこう言う。



「今日、仕事終わりに会えますか。」




いつもよりも若干スピードを落として走る一人きりの車内。

火照った頬を冷ますようにエアコンの温度を下げた私は口元を緩めながらも職場へ向かった。















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