赤晶金


「寝てっし…」

呼び出されてきてみれば、当の本人は机に突っ伏して夢の中だった。
普段なら文句を言いながら起こすところだが、此処最近忙しいと聞いていたのでそのままにしておく。

(コイツちゃんと休み取ってんのか?)

覗き見た顔には目の下に少し隈が見えた。
真面目な彼女のことだ、きっと毎日仕事詰めだったのだろう。
顔に落ちた前髪を掬ってやろうと手を伸ばす、が。

「…ッド、さ…」

薄く開かれた唇から零れたのは自分の尊敬する先輩の名前。
中途半端な位置で止まった指が酷く滑稽に見え、力なく膝に落とす。
彼女が彼を見ていることも、自分を見てないことも判っていた。
三人でつるんでいたのは今は昔の話、最早彼女の中に自分の居場所は無いようで。

「…キッツいな」

膝の上で握り締めた拳に落ちた雫に、窓から差し込む夕日が色をつけた。









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