緑青



バイトを終え店を出ると、空からちらちらと雪が舞っていた。
おまけに寒風が吹き付けてきて非常に寒い。
ここまで冷えるならもっとしっかり防寒してくるんだった、とブルーは後悔した。
店から駅までは少し距離がある。
多少雪をかぶるだろうが仕方ない、と足を踏み出しかけたところでおい、と声をかけられた。
声のした方向を向くとそこには愛しい恋人の姿。

「何で」
「迎えに来た」

そう言ってグリーンは真っ白い息を吐く。その鼻の頭は赤くなっていた。
そういえば今日のバイト上がりの時間を彼は知らなかった筈である。
一体どれだけの時間待っていてくれたのだろう。
おまけに自分も寒いだろうに、見てるこっちが寒いだの何だの言い訳しつつ巻いていたマフラーをブルーに巻いてくれた。
ぶっきらぼうな行動と未だ体温の残るマフラーに愛を感じて嬉しくなり、思わず彼の腕に抱きついた。

「そんなにくっつかれると歩きにくいんだが」
「いいじゃないたまには!」
「…うるさい女だ」

文句を言いつつも振り解かないでいてくれるところも彼らしい。
小さく微笑みながら腕を掴んでいた指をグリーンの指と絡める。
やはり長時間待ってくれていたようで、触れた指は酷く冷たかった。
少しでも暖まれば、と自分の手で包んでやろうとするが、自分のよりも一回り大きな彼の手を包むには片手では難しい。
どうしようと考えていたら逆に握り返されて、そのまま彼のコートのポケットに突っ込まれた。
思わずグリーンの方を見上げると僅かに顔を赤くして視線を逸らされる。
それにつられてブルーも赤くなった。

「…コンビニ寄って帰るか」
「あ、あたしあんまん食べたい」

傘に積もった雪の塊がばさりと落ちた。






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