クダカミ
いきなり呼び出すから何かと思ったら、と心の中で溜息を吐く。
焦って駆けつけた私を出迎えたのはいつも以上ににこにこしているクダリだった。
手にはポップな絵柄の缶が握られている。
アルコールにあまり強くない彼が飲酒するのは祝い事の席くらいの筈であるのにどうしたことか。
「何か良い事でもあったの」
「んー?」
そう尋ねるととろんとした目を此方に向けてクダリはにへらと笑った。
普通は男の人に向ける言葉ではないのだけれど、今の彼は可愛い以外に表現しようがない。
「負けちゃった」
「え、」
スーパーダブルで、負けちゃった。
呟くように言うとクダリは散らばった空き缶を重ね始める。
緑、紫、桃と様々な色の缶が立て一列に並んだ。
「それは嬉しいことなのかしら?」
「…」
素面の彼なら勿論!と元気に返すところだが、今の彼は何も答えなかった。
サブウェイマスターは本来倒されるために存在する。
それでも彼らも一人の(二人の、かしら)トレーナー、負ければ当然悔しいのだ。
「お疲れ様、クダリ」
俯いた彼の頭に手を乗せて軽く撫でてやると、小さく嗚咽が聞こえた。