緑青



目の前を鮮やかな青に染めたそれは甘やかな香りを放っていた。
差し出した本人はそっぽを向いている。

「ちゃんとこっち向いて渡しなさいよ」
「…勘弁してくれ」

柄じゃない、とますますそっぽを向いてグリーンが溜息を吐いた。
確かにそうかと頭の片隅で思いながら薄いビニールに包まれた花束を受け取る。
彼がどんな顔をしてこれを買ってきたのかを考えると思わず笑いが零れた。
笑うな、とグリーンがこちらを睨む。

「大変だったでしょ、手に入れるの」

ブルーの腕の中にあるものは本来ならこの世に存在しなかったもの。
それが花束になる位の量が今ここに在る。
容易いことではなかっただろうというのは想像に難くない。

「前、お前が見てみたいって言ってたから」
「…へ」

そう言ったきり視線を地面に落としてしまったグリーンの表情は窺えないが、髪の隙間から見えている耳が真っ赤なところを見るとどうやら照れているらしい。
それにつられて思わずブルーも赤くなる。
確かに見てみたいとは言ったがそれは殆ど独り言のようなもので、彼が聞いていたとは思わなかった。

「…その為にわざわざ?」
「………」

答えは返ってこなかった。
それでも十分嬉しくて、それをぎゅうっと抱きしめる。
あぁ、あんまり強くするとしおれてしまうかしら。



ブラウエローゼン



更にそれがきっちり歳の本数包まれていたことに気付くのはもう少し後になってから。






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