緑青


それを見つけたのは偶然だった。
目当ての物を購入した後、時間潰しの為に陳列棚を眺めていた時、視界に入ったもの。
普段の自分はあまりそういうものに興味はないのだが、この時は何故かそれに酷く惹かれたのだ。
テスターを手首に一吹き。甘ったるいものではなく、爽やかな風のようだった。
あいつが好きそうだ、と頭の何処かで思い、一つ手に取る。
よく見ると容器の色だけでなく名前までも彼女を連想させるもの。
よっぽど惚れ込んでいるな、と苦笑した。

「あら、グリーン何か付けてる?」

彼女はすぐさまそれに気付いた。
首筋に顔を近づけすんと鳴らす。彼女の髪がかかりくすぐったい。

「あぁ、この前見つけて気に入ったんでな」
「ふぅん」

私、この匂い好きかも。
そう言われて以前の自分の予想が当たっていたことに思わず口元が緩んだ。

「ねぇ、これ何て名前の香水?」
「…教えない」
「何でよ、ケチ!」

ぷんすかと怒る彼女に背を向け、じわりと熱を持ちかけた頬を掌で覆う。
鼻が良いだけでなく目敏い彼女のことだ、それを知ったらきっとオレが何故これを気に入ったのかバレるだろう。
その香水の名前は、シャイニー・ブルーと言う。


フレグランス


輝く君が好き。






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