ジョウトリオ
クリスが事故に遭った。その連絡を受けてゴールドとシルバーはすぐさま病院へと駆けつけた。受付で彼女の部屋を訪ね、病室へと向かう。
「しっかし災難だよなぁ、事故に遭うとか」
「…そうだな」
けらけらと笑いながら話すゴールドとは対照的に、シルバーは何処か不安を覚えていた。
何だか、嫌な予感がする。そんな雰囲気を読み取ったのかゴールドが顔から笑いを消した。
「…大丈夫、だよな。あいつなら」
「だといいがな」
そこから病室までの道のりは沈黙だった。
どうか、この感覚が気の所為でありますよう。
真っ白な壁に反射する二人分の足音がやけに大きく聞こえる。嗚呼、煩い。
じっとりと流れてくる汗を拭い、病室のドアに手をかけた。
窓際に、彼女は居た。
その姿を見た時、ゴールドの顔はさっと青褪め、シルバーは小さく舌打ちをした。
嫌な予感は、当たってしまったのだ。
白く細い脚にはそれ以上に白い包帯が巻きついており、クリスが座っているのは両脇に車輪のついた特殊な椅子。
「…あ、ゴールド。シルバーも」
二人に気付いたクリスが振り返って笑う。しかしそれなりに付き合いの長い間柄である、その笑みが作られたものだということはすぐに判った。
「事故、だそうだな」
「…うん」
シルバーの問い、というよりも確認に一拍置いてからクリスは頷き、再び窓の外へ視線を向ける。
暫くの無音空間。それを壊したのは彼女自身だった。
「…脚、もう使えないんだって」
何処か他人事のように彼女は言う。それは自分の身に起きたことであると認めたくないからなのだろうか。クリスは捕獲の専門家、当然脚を使う仕事である。
「歩けないし、走れない。ボールを蹴るなんてもっての他」
段々と声に震えが混じり出す。ぽたり。膝の上で握りしめられた拳に雫が落ちるのが見えた。
彼女がこれまでどのような生き方をしていたか、彼らはよく知っている。
「これじゃ私、生きてる理由がないよ…っ!」
だからこそ、ぼたぼたと涙を零すクリスにゴールドとシルバーは何も言えなかった。