緑青



はいと渡されたのは薄いピンク色の袋。
それは綺麗に飾られているのだが何処か味気なく見えた。
中身が何であるかは時期的に予想がつく。
しかし、考えるより先に言葉は出ていた。

「要らん」

数秒前まで目の前で笑っていた彼女の顔が段々と曇っていく。
目尻に溜った水滴は今にも零れ落ちそうである。
それを見て漸く自分の言葉不足を悟った。

「オレは、お前が作ったのが欲しかった」

彼女を泣かせないためとは言え率直に意見を言うのに慣れてなくて、最後の方は視線を逸らしてしまった。
それを聞いた彼女は一瞬キョトンとした顔になり、少し慌て出した、ように見える。

「あ、あのね、作ってた、んだけど」

失敗しちゃって、と俯きながら呟くように彼女は言った。
オレはふっと息を吐くと彼女の頭に手を置く。

「今日は未だ半日残ってるが」

遠回しの、精一杯の、待っているという気持ちを含ませた言葉は彼女にも伝わったらしく、再び笑顔になった彼女はジムを飛び出していった。


既製品お断り


彼女のチョコが完成するのが先か、仕事が片付くのが先か。







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