ノボ主♀


ガラリ、と私の居る車両への扉を開けたのは常連になったトウコ様だった。
しかし身なりがいつもと少しだけ違う。

「…トウコ様、それは」

いつもショートパンツから剥き出しにされている脚が、今日は黒に包まれていたのだ。

「あぁ、これですか?」

今日はちょっと寒いので、と少しタイツを引っ張りながらトウコ様は笑う。
そうですか、と返しながら帽子を深く被り直した。

今トウコ様はこの姿で此処に居る。
そして此処に来るには二十連勝しなければならない。
つまりはそういうことで。

そんな事を悶々と考えていると、正面の彼女が嬉しそうに言った。

「何だか今日のノボリさんは一段とやる気満々ですね!」
「はい?」

目つきがいつもに増して鋭いですよー、とくすくす笑う彼女にこっそり溜息を吐く。

「…そうですね、やる気はいつも以上かもしれません」
「楽しみです!」

腰のボールに手をかけながら、頭の中では別の思考が駆け巡っていた。

(…今日このシングルに乗っていた人達に、会う必要がありそうですね)






タイツ装備でトレインに挑戦に来たトウコちゃんと、自分の前に他の人にその姿を見られたことが許せないノボリさん。







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