金藍
「あれ、お前怪我してんぞ」
「…え、あ」
ゴールドに指された部分を見てみると、擦り剥いたような痕があった。
先程までの修行中に付いたのだろう。
いつものことだと放置しようとしたが、ゴールドにぐいと腕を取られる。
「な、何ねゴールド先輩?」
「何って、治療に決まってんだろ」
「こんくらい慣れとるけん平気ったい!」
「ダーメだ」
黙って手当てされてろ、と強めの口調で言われ、仕方なく大人しくする。
その間にもゴールドはてきぱきと器用に治療していった。
「ゴールド先輩、手当て上手やね…」
「ん、まぁ必要に迫られて?」
シロガネ山じゃあいっつも傷だらけだったしな、とけらけら笑うゴールドにつられてサファイアも笑った。
しかしその笑いもすぐに収まる。
「野生児だろうが何だろうが、オメーは女なんだから。もちっと気を使え」
いつものおちゃらけた感じではなく真面目な調子で諭されて、サファイアは思わず呆気にとられた。
それから再び笑い出す。
「何笑ってんだ」
「んー、何か兄ちゃんみたいやなぁっち思って」
「お前は随分とおてんばな妹だな」
ぺたりと絆創膏を貼り終えたゴールドが立ち上がり苦笑する。
此方に背中を向けて伸びをする彼を見て、サファイアは彼のような人が兄弟だったら楽しいかもしれないと一人口元をつり上げた。