あたしの家はハロンタウンで酪農家をしている。
 隣の家に住むダンデとは物心つく前からの幼馴染みで、よくお小遣い稼ぎにうちのウールーの毛刈りを手伝ってくれた。別にダンデの家は貧乏ってわけじゃないし、寧ろ子どもに使うお金は惜しまないって感じだったけど、ダンデは多分自分でやりたいことは極力自分だけでやりたかったんだと思う。少し抜けてるけど、努力家で意思が固いしっかり者。要するに今ガラルの皆が知ってる“チャンピオン”は昔からチャンピオンだったんだよね。ずっと昔は私だけが知っていたことを、今はガラルの皆が知っている。方向音痴なところも、ポケモン馬鹿なとこも。そんなことを思いながらテレビを観ていたら、もう何年もダンデに会ってないんだなあって痛感してしまった。
 ジムチャレンジの旅に出られなかったあたしは今、エンジンシティのブティックで働いている。何かになりたいと思って出てきた街だけど、結局あたしは何にもなれないままテレビの向こうのあなたを観ている。きっともう、あなたにとって“隣の家の娘さん”以上の価値がないあたしのまま。

 時々、チャンピオンになんかならなかったら良いのにって思う。惨めな女。
誰でもないひと
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