Sunday 

結局昨日、景吾は帰って来なかった。何処にいるのかも分からないので念のため連絡したが、電源が切られてしまっていた。今日はついに景吾と過ごせる最後の日だ。一週間で彼はそこそこ料理も作れるようになった。メイドと言うよりも、本当に同居人だったのだが、これで良かったのだろうか。
誕生日ということで一応ケーキは作ってみた。ただ、問題なのは彼が帰って来ないことだ。既に時間は夕方の六時。景吾に連絡はしたが、無情にも「電源が入っていない」というアナウンスだった。
彼は帰って来ないのではないか、そんな予感がして荷物を纏めて家を出ようとした時、玄関が開く音がした。

「景吾…?」

玄関まで行けば息を切らした景吾が立っていた。見れば、いかにも高そうなきちっとしたスーツを着ていたが、彼が走ったせいか少し皺が出来ていた。髪はいつもと違ってまとめられていて、少しだけお酒の匂いもした。

「っ、悪い。パーティーがあって連絡出来なかった。…あ、何で荷物纏めてんだよ?」
「…そろそろ帰ろうと思って、」

メイドの話、今日まででしょ?と言えば突然抱き締められた。

「なぁ、今日俺の誕生日なんだよ。」
「…うん、知ってる。ケーキ、焼いたからさ」
「……頼むから帰るなよ」
「え、?」

聞き返せば再度「勝手に帰るんじゃねーよ。」と強い口調で言われた。驚きのあまり声が出ず、ただ自分の耳を疑うばかりだった。まさか、景吾の口からそんな言葉が出るなんて。それでも拒むことが出来ない私は、少なくとも彼に好意を寄せているからだろうか。

「お帰り、景吾」

そっと抱き締め返せば、景吾は私の耳元でただいま、と囁いた。カバンを玄関に置いたまま、景吾とリビングまで行けば、早速ケーキを食べ始めた。

「やっぱなまえの作るものは、何でもうめーわ」

素直に美味しいと言われれば妙に照れくさかった。景吾の為に頑張った甲斐もあったかな、と自然と口角が上がるのを感じた。その流れで昨日買ったプレゼントを渡せば「開けてもいいか?」と聞かれたので黙って頷いた。

「……これ、」
「景吾が欲しがってるって、忍足から聞いたから」

私が昨日買ったのはペアルックになるというキーホルダーだ。景吾に恋人がいなかったら…、と思って本当はあまり買いたくなかった。それ以前に、私の好みで買ったキーホルダーを景吾が彼女とお揃いで付けたら、それはそれで複雑なんだけどね。

「なまえに片方やる」
「…はい?」

突然ギュッと手を握られたかと思えば、プレゼントとして景吾に渡したキーホルダーの片割れが私の手に握られていた。

「本当はなまえのこと、前から知ってたんだよ。ずっと好きだった。」

突然の告白に硬直したまま目を見開けば、景吾は私の目を見ながら告げた。

「なぁ、俺と付き合わねーか?」

まだキーホルダーを握る手には景吾の体温が残っていた。しばらく静止した後、そのまま震える声で「はい」と頷けば彼は何も言わずに私をソッと抱き締めた。

「最高の誕生日プレゼントだ」

愛してる、と囁く景吾のキスを受け止める私は、もしかしたら彼のスーツから漂うお酒の匂いに、酔っているのかもしれない。



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