Friday
「終わる頃に迎えに来る」
景吾はそれだけ言えば、直ぐに車に乗って帰ってしまった。私は車の種類なんて詳しくないけれど、いかにも高そうな外国車っぽかった。普通のコンビニにそんな車が止まれば嫌でも目につく、お陰でバイト中は同僚に「さっきの彼氏?」なんて聞かれる始末だ。
「違う違う、友達。」 「でも格好良かった〜。本当にただの友達なの?」 「うん」 「なまえの男友達ってさ、みんな格好良いよね。あっ、今度私に紹介してよ」
どこまで冗談かは分からないが、彼女は忍足が来る度に熱い視線を送っているので、もしかしたら本気かもしれない。適当に「はいはい」と流して仕事に集中した。 それにしても景吾が免許を持っていたなんて。しかもめちゃくちゃ運転上手かった。普通、金持ちって専属の運転手がいるんじゃないの?よくドラマなんかではそんなシーンがたくさん出てくる。バイト中も、その事ばかり気になった。(まあ帰りに聞けばいいや、そろそろ景吾が迎えに来るし。)なんて考えていれば運悪くレジが混みだしたので、上がるのが二十分ほど遅くなってしまった。急いでコンビニを出れば、彼が車の外でタバコを吸っているのが目についた。
「ごめん、遅くなった」 「気にしてねーよ」
私が近くまで駆け寄れば、すぐに景吾はタバコを消した。
「景吾って、タバコ吸うんだね」 「まあな」 「でも今まで見たことなかったから…」 「なまえがタバコ嫌いだって、忍足から聞いてたからな、お前の前では吸わなかったんだよ。…なんなら、なまえの為に禁煙もするけどよ。」
そのまま顔が近付いて来て、気付けば景吾に口付けられていた。驚いて彼を見上げれば「俺様を待たされた分だ、」と意地悪く彼は微笑んだ。
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