てっぺん
おとなの敷いたレールってやつに僕は乗ってみた。だって、子供だから。私立中学に合格した後は有名な進学校に行くんだって。お父さんは医者になれと言うけれど、お母さんは弁護士になって欲しいらしい。僕のいないところで言い争うのを何度も聞いた。僕は、まだ、子供だから。子供が親の言うことをきくって普通のことだよね


ふつう、
ふつう、
ふつう、



「本男なんて、ぜんっぜん上手くない。そのまんまじゃないか」その一言が言えないまま、卒業まで後二ヶ月になった。 日曜日は図書館。自分の部屋にいても、なんでかお母さんやお父さんに監視されているような気がして息が詰まるから。周りには大好きな本だけで、息苦しい感じも、わけのわからないモヤモヤに悩まされることもない。昼食代の入った財布と勉強道具を持って家を出る。
 図書館は(たぶん)僕と同じ受験生で溢れ返っていた。いつも座る個人用の机も、下の階の割と静かなテーブルも。相席はなんとなく嫌で、暖房がきかない、人気のない資料室の机に座ることにした。予想問題集を開いて、いつも通りに解いていく。すこし指がかじかんだけど、何度か息を吹きかけたらだいぶ良くなった。“勉強”の時間は二時間でおしまい。これは、図書館に来るようになった二つ目の理由。お母さんは僕が参考書以外の本を開くのを見て眉をしかめる。面白そうな本を探す時が一番楽しい。お母さんもお父さんも知らないところで、僕はどちらも望まないことをやっている。医者にも弁護士にも関係ない本。海の生き物とか、昆虫とか、恐竜の本。ジミー(最長記録更新中だ)が好きな洋楽の歴史なんかも、面白い。僕の小さな反抗は多分これからも続いてく。
 僕が18歳になったなら、そう考えるといつも楽しくなる。言い争う二人を横目に、僕はレールから飛び降りてやるんだ。それは僕が考えるよりずっと難しいことなんだろうけど、不思議とできない気はしない。きっと本を探す時みたいなんだろうと思う。
 
ぺらり、
(つづく)
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