恋するバンビに恋した報われない琉夏
(琉夏→バンビX)


彼女が俺を愛せないなら、
彼女以上に愛せる人を俺に下さい。
でないと、いつまでも彼女を諦めきれずに縋り付いてしまうから。




同情してくれているような曇天に小さくため息を吐いた。
もしも、これが茜色の空だったら、一瞬でも全て忘れることができる気がする。

「どうしたの?ルカ君」

黙り込んでいたことを不思議に思ったのか、顔を向けると彼女と目が合った。
こうして一緒に帰り、錯覚している俺を牽制するかのように彼女は困惑した表情で笑った。

俺の思う方向に。
俺が望む未来へ。

そんな儚いことを考えることは、愚かなことだろう。

「何でもないよ」
「そう?」
「うん、元気100倍!」

ルカレンジャー出動準備完了。そんな風に明るく振る舞っても後に残るのは虚しさばかり。

手に入れたい衝動と抱きしめてはいけないという自制心。

「また渡り廊下から飛び降りたって本当?」
「飛び降りたんじゃなくて、スーパージャンプです」
「……同じことでしょ。怪我したらどうするの」
「しないよ、ヒーローだから」

彼女だけのヒーローになれなくちゃ意味がないから。
守るものがなければ、ヒーローにはなれないんだ。

危ないことして怪我しないでね、と一瞬彼女の瞳が曇る。
まるでヒーローを心配するヒロインみたいに。

優しさは残酷で、優しさは美しい。

彼女の好きな人には敵わないと分かっているけど、最大の敵は彼女が恋をしてる人。
これじゃあ、俺が恋を引き裂く悪役だ。


「正義のヒーローになりたいよ」


でも今は運命を信じたい。
信じることしかできないから。
いつか運命が変わることを。


空を見上げると、曇天はいまにも泣き出しそうだった。

fin.

―――
ごめん、琉夏。
わたしにはまだ、琉夏を幸せに出来なかった、

別のバンビちゃんたちがちゃんと幸せにしてくれるからね。
△バンビは無意識にしてもひどいと思う。男子側になると苦しくなる。
20100805
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