恋するバンビに恋した報われない琉夏
(琉夏→バンビ→琥一)
↓
コウに恋したお前に、恋をした。
泣き虫、道化師
三人で帰っても、喫茶店に寄っても、コウに向ける視線は優しかった。
気付いてないとでも思ってた?
気付かないふりして笑うのも、もう疲れたよ。
でも、気付かないふりをすることがこの恋の最後の砦なんだと思う。
「喫茶店に行かない?」
放課後、美味しいホットケーキを口実に彼女を喫茶店に誘う。
「うん、いいよ。ルカ君のオススメなら食べてみたいもん」
「よし、決まり。早く行こう、行こう」
「あっ、待って。コウ君にも聞いてくる」
「あ」
制服のスカートを翻して、彼女はコウを呼びに行ってしまった。
咄嗟に発した声は全く届かなかった。
いつも彼女を誘うのは俺からなのに、結局コウもついて来るんだ。
そんなの不公平じゃないか。
「コウ君も行くって」
手を大きく振りながら彼女がうれしそうにコウと近付いて来る。
喫茶店に行くまでの道では、俺と彼女ふたりで先を行く、少し距離を空けて、コウがゆっくりとついて来る。
「今日の髪型可愛い、超ストライク」
短いながらアレンジされた彼女の髪型。名前は知らないけれど、本当に可愛いと思ったんだ。
「ありがとう。……コウ君はどう思う?」
彼女は振り返って、わざわざコウにも確かめる。
「悪くないんじゃねぇか」
「そっか……悪くない、か」
進行方向へ向き直した彼女の歩くスピードが急激に遅くなる。
彼女が落ち込んでいくのが目に見えて分かった。
コウにとってはそれが褒め言葉であっても鈍感な彼女はそうとは思わない。
コウの何十倍も、愛を語っているのに、相手にされないだなんて、悲しいよ、でも何百倍も愛を語ったら伝わるかもしれないだろ。
「ぁあ、お前らしい」
「私らしい?」
「なんつうか、明日も見てぇな、それ」
彼女の表情が一瞬で笑顔に変わる。
ふわりと、穏やかに、
小さな花が咲くように。
笑顔が綻ぶ。
「うん、明日もこの髪型にする!明日も明後日もこの髪型にする」
「毎日んな髪にしてたら、寝坊すっだろ。だから明日だけでいい」
コウがたった一言発しただけで彼女が美しく輝く。
自分に向けられた笑顔ではないことぐらい分かってるんだ。
だけど、錯覚することぐらい許してくれる?
許してくれないと、チューしちゃうよ。
君が笑うなら
笑うしかないだろう。
コウにときめくたびに輝いていくお前と、今日の夕日はとても似ていた。
近づきたいのに、眩しくて
俺より先に、明日に行って
fin.
―――
7/20に書き上げてから少しづつ直した結果、ものすごく短くなりました。
報われない琉夏は好きだったりします。
報われない琉夏っていうカテゴリーではあるけれど、バンビちゃんの片思いシリーズだったりもするのです。
琥一好きさんは読んでいてくれているのでしょうか←
分かりませんが、書いちゃいます。
20100910