クッションを抱きながら、バイク雑誌をめくる彼女を彼は衝動的に後ろから抱きしめた。
滅多にない彼の行動に彼女は目を丸くしている。

「どうしたの?」
「理由なんか要るのか?」

彼の表情を見ようと彼女は体を捩るが、その度に腕に力を入れられ動くことができない。
彼女が諦めたことを悟ると、彼はウエスト部分に手を回す。
どうしていいか分からずにいた彼女だったが、結局大人しく彼に身を任せることにしたようだ。

「お前、痩せたか?」

彼の手が彼女をTシャツ越しになぞる。彼の熱さに彼女は声を上げそうになりながらも答える。

「そんなことないよ、多分。最近体重計乗ってないから分からないけど」
「いや、痩せた。最近、あいつと一緒にホットケーキしか食ってねぇだろ?」
「……でも、ホットケーキばっかり食べてたら太るんじゃないかな?」
「知るかよ」

少し拗ねた様子に彼から振ってきた話なのに……と彼女は心の中で笑った。

「じゃぁ、ホットケーキ我慢しようかな」

彼女の一言に彼は腕の力を緩めて、くるりと彼女の身体を反転させ腰をぴたりと寄せた。

「それが、いい。あいつとは一緒に食うな」
「……一緒に食べなければいいの?」
「あ?ぁあ、まぁ、そんなとこだな」
「じゃぁ、一緒に食べてくれるの?」

毎日ホットケーキを見ているせいか、匂いを嗅ぐのもいやだと言っていた彼とは、一緒に食べたことが数える程度しかない。

「……ホットケーキ以外ならな」
「えー、なんで」
「なんでもだ」
「理由も教えてくれない人の言うことなんて聞けません」

彼女が彼をからかうように、見つめる。ふたりの視線が自然と絡まるように合った。

「分かれ、馬鹿」

ホットケーキなんか食ってたら、あいつが匂いを嗅ぎ付けてくるだろ、せっかくふたりでいんのに。と彼は不機嫌そうにぶつぶつと言う。

「今は来ないんじゃないかな?バイトって言ってたし」
「……だったらもっと別のことがしてぇ」
「一緒にホットケーキ食べてくれたらいいよ」

彼の考えを察した彼女は期待を込めて少し笑った。
考えといてやるよ、と彼は心の中で呟きなががら、彼女の首筋に唇を落としていった。

午後のひと時。

fin.
20100710
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