意外にも少年は私の家にすんなりついてきた。そして明るいところでまじまじと見ると、頬や手に擦り傷があり、汚れていた。手当が先か、お風呂が先か悩み少年に選ばせるとあっさり「風呂」と言ったのでお風呂に入らせる。
 少年が入浴している間、足の痛みに気が付き見ると擦りむいたところから血が少し滲んでいた。ストッキングは言わずもがなである。とりあえずスーツを脱いで、下着姿になってから足に消毒液を吹きかける。幸い砂利や土は入っていないようなので、そのままお風呂で洗ったら絆創膏でも貼ろうと思う。

「お先、いただきやした」

 お風呂から上がった少年は意外にも礼儀正しい一言を発したけれど、腰にタオルを一枚巻いただけで、髪の毛からはぽたぽたと水滴を垂らしていた。そんな彼の姿についてはあまり気にならず、おいでと私が座っているソファの下の床を指す。
 これまたすんなりと従った少年の頭を、手近にあったタオルで拭いた。頭を包み込むようにして拭いているからか、人というよりもペットの体を拭いているような気分だ。

「なんか、ペットみたい」
「俺がですかィ」
「しかいないでしょ」
「じゃ、俺ァおねーさんのペットでいいですぜ」

 ふと立ち上がって私に向き直った少年は、そのまま触れるだけのキスをした。唇を話してから少し笑った少年の顔は、まだあどけなさを残していた。

「少年が、ペットかぁ」
「少年じゃなくて、総悟でィ。おねーさん」
「おねーさんじゃなくて、名前、ね」

 見合って笑った少年の「風呂入りますかィ」の一言に肯定の返事をして私は風呂場に向かった。そして、脱衣所の鏡の前に来てやっと、自分がずっと下着姿だったことに気付くのであった。
 幸か不幸か、アルコールの残る頭ではペットの前で下着姿でいることも、キスをすることもごく普通なこととして片づることしかできなかった。

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