始業式が終わって、携帯を見ると親父からのメールが入っていた。イラついてメッセージ画面を開くと「九時に駅前のホテルのレストランで待ってる」とだけ。とことん付き合い方を知らねえ親だと思ってイライラも募るが、とりあえずわかったとだけ返してパチンとその携帯を閉じた。

「高杉くんも帰りCDショップよる?」
「俺パス」
「高杉いねェと店員にビクビクされねェから良かったって山崎が言ってたぜ」
「やーまーざーきー」
「ちょ、嘘ですよ!って聞いてないしいいい!」

 一通り山崎をシバいてから、馬鹿二人と別れて一人約束の場所まで歩く。金のことか、進路のことか。後者の可能性が高いからか、気が乗らないのは仕方がないと思う。足取り重くやっとホテル前までつくと、繁華街だからか夕方になったからか、辺りは賑わいはじめていた。

「こっちこっち」

 エレベーターをつかって最上階まで上り目的のレストランに入ると、奥で親父が手招きをしていた。

「ちゃんと食べてるのか」
「ああ」
「そうか」

 毎回決まって一番にこの台詞。好きなものを頼めという意味で渡されたメニューに一通り目を通している途中、親父が口を開いた。

「墓参り、いくか?」
「ん、まあ…」
「そうか、」

 俺は一度も墓参りに顔を出したことはなくて、去年親父に誘われたのを断った時に来年は…と思ったことを思い出す。今年はいってやるか、とぼんやり年始に思ってはいたが、そうか、もう新学期にもなったんだもんな。まあ今日はそれを言いに、と継いだ親父に俺は驚きを隠せずにいた。てっきりお前は卒業したらどうすんだとかを言われるものと思っていたから。
 頼んだ料理を平らげてから、親父にじゃあ帰るわ、と告げて席を立つ。昔の俺がこの光景をみたら、あまりの穏やかさに目を見張ることだろう。

「ありがとうございました」
「おおきにー」

 ん?とどこかで聞いたような声とこの場に似つかわしくない関西弁に反応し声のするほうを振り向くと、高級そうなクラブの店先で客を送り出すこれまたどこかで見たような顔。
 だれだったか…と必死に思い出そうとしては見るがなかなか思い出せない。うわ、なんか気持ち悪いなここまででかかってんのに。必死に思い出そうとする最中、九時からのドラマを録画予約するのを忘れていたことを思い出した俺は、いったんその疑問をおいて、足早に家路についた。

:)110523
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