「お前も偉いもんだなあ」
「何当たり前のこと言ってんでィマダオ。
それより仕事見つかったのかよ」
「いや結構前から名前ちゃんの学校で用務員の仕事してるっていってるよね!?聞いてないの?俺の話聞いてないの?」

 少し…いやかなり心配でこの家に来てみれば案の定総悟が一人で留守番をしていた。今何時だよ、とかかっている時計を見ると九時を回っていて、総悟はこの広い家で一人ぼっちで連ドラを見ながら学校のものであろう宿題をしている。
 あ、これ俺も毎週見てるんだった!と総悟の隣に行くと、また来たのかよーと総悟の声。まあこんなのいつものことだからもう気にしてないんだけどね!

「名前ちゃんはまた仕事か?」
「見りゃわかんだろィ」
「まあ、そうなんだけどよ…」

 一人で平気か?だとか寂しくないのか?とか、そんなことを聞けるわけがない。そんなの当たり前だ。まだ総悟は九つのがきんちょで、甘えたい盛りの年頃じゃないか。それなのに、一気に両親と姉ちゃんを亡くしちまって、辛いはずがないのに。

「一緒に遊ぶか!」
「この女が振られるまで目は離しやせんぜ、いつもの高飛車な態度がどうでるか見ものでさァ」
「…じゃあそのドラマ終わったら人生ゲームでもする?」
「いいけど、ゲームでまで人生転落しても誰も慰めやせんぜ」

 なんか全部前言撤回したくなっちゃったけど!でもこんなのいつものことだからね、妙に大人びてるのはもともとってのもあるけどもう俺は慣れちゃったからね。
 じゃあ終わったらトランプでもしようか、と総悟に一言残してから買ってきた缶ビールとつまみを広げる。また現実逃避ですかィ、の総悟の言葉は聞かなかったことにしよう。
 そしてそのビールのプルタブを開けた瞬間、玄関の呼び鈴が鳴った。
名前ちゃんか?でもそれにしては早すぎるような…。

「ちょっと見てきまさァ!」

 飛び出すように玄関まで走って行った総悟の背中を見て、どうしようもなく切ない気持になる。名前ちゃんなら呼び鈴なんて慣らさずに鍵を開けて入ってくるのに、それでも少し期待をしてまうその気持ちがいじらしくて悲しくて。その気持ちを押し流すように手に持っていた缶ビールを喉を鳴らして飲む。

「おじゃましまー…ってあれ、用務員のマダオじゃん」
「こら総悟お前人の足踏んでんじゃねえよ!わざとだろ!」
「お邪魔しますねー」

 この声聞いたことある…と振り向くと、名前ちゃんの同級生の銀さんと土方の姿。そして確か名前の担任の吉田先生。
 二人のことはまだ中学生だったころから知っている訳で、そしてなんでこいつらにまでマダオなんて呼ばれてるんだ…と泣きたくなった。

「こちらが沖田さんのお宅ですか」
「なんでいんの?家なくなった?」
「ちげーよ!隣にちゃんと住んでるよ!」
「てんめなんで来てんだよ土方コノヤロー」
「お前は相変わらずだなホントによ!」

 へえマダオまだ追い出されてねえのかーと珍しいものでも見るような眼で見てくる銀さんに、お前らこそなんなんだよ!と言い返す。しかし部屋の騒がしさは増す一方だけど、総悟の顔つきがどこか楽しそうで…。

「よっし皆で人生ゲームでもするか!」
「いいけどよ、ゲームでまで人生転落しても俺たち知らねえぜ」
「お前たちなんなの!?打ち合わせでもしてんの?」
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